北海道新幹線工事における遠隔臨場の取り組みについて - モデ...

北海道新幹線工事における遠隔臨場の取り組みについて  - モデル工区 渡島(おしま)トンネル(上ノ湯(かみのゆ)) -

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(本社:神奈川県横浜市、理事長:藤田 耕三、以下、「機構」)は、建設DXを促進するためにロードマップを公開し、その取り組みを推進しております。今回は、モデル工区にて取り組んでいる遠隔臨場の実証状況をお知らせいたします。

安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)は、遠隔臨場等のさまざまなICTの運用をサポートするために、高速大容量のデータ通信を実現する汎用的な情報通信基盤を構築して運用しております。


北海道新幹線工事においては、遠隔臨場の本格導入を目指しモデル工区を設定して取り組んでおります。(注1)その取り組みを先行して行っていた遠隔臨場モデル工区である「渡島トンネル(上ノ湯工区)」(以下、「当工区」)では、さまざまな立会項目を遠隔臨場で実施しました。



1. 遠隔臨場実施の設備について

・Web会議システム…Microsoft Teams

・撮影機材(当初)…一眼レフカメラ(望遠ズーム付き)、高機能ノートPC、スマートフォン、ウェアラブルカメラ、イヤホンマイク、ジンバル

・撮影機材(追加)…Go pro(撮影用)、遠隔臨場支援システムPC(防塵対策加工済)

・通信環境…トンネル坑内に無線LANネットワークを構築



2. 遠隔臨場の実証状況について

当工区の遠隔臨場で実施した切羽(きりは)確認の事例を紹介します。

切羽確認とは、トンネル最先端部の地質状況を確認して、それ以降のトンネルの掘り方をどうするか判断するための重要な確認です。機構事務所から職員がモニター越しに切羽状況を確認します。実施当初は、スマートフォンや一眼レフカメラを用いて切羽状況を確認していましたが、画質の低下や音声の途切れなどで正確な切羽確認が出来ないことがありました。そこで、当工区に最適な撮影機材を導入(写真1)すること、坑内通信設備を大容量高速通信対応に改良を行った結果、機構事務所側の映像・音声の品質が向上し、切羽確認が実施できています。

この他にも、生コンクリートの品質確認試験やコンクリートの施工確認等の立会検査を遠隔臨場で実施しています。(写真2)


写真1:切羽を撮影する様子と一眼レフカメラと遠隔臨場支援システム

写真1:切羽を撮影する様子と一眼レフカメラと遠隔臨場支援システム

写真2:覆工コンクリート巻厚測定の撮影状況と確認者側の映像

写真2:覆工コンクリート巻厚測定の撮影状況と確認者側の映像


遠隔臨場を導入した良い効果として、経験の浅い若手職員のサポートをベテラン職員がリアルタイムで行う事が出来ました。機構は、若手職員の技術力向上のため現場巡回等を通して現場を見る力を育てる取り組みをしています。現場巡回中に疑問に思った事・判断に迷った事を事務所に持ち帰って質問や調べたりするのではなく、現場状況の映像を中継しながらベテラン職員へ直接質問することで即座に問題解決ができ、業務効率化にも繋がりました。(写真3)


写真3:切羽確認をする機構職員(黄色のプロテクター)と機構事務所からのサポート状況

写真3:切羽確認をする機構職員(黄色のプロテクター)と機構事務所からのサポート状況


3. 通信網の構築について

前述の遠隔臨場を滞りなく実施するために、当工区では作業環境に合わせた最適なデータ通信網を構築し、かつ、高品質な通信環境を維持するために、現場詰所から切羽付近までの区間において、低速(概ね1Gbps)と高速(概ね10Gbps)の光ケーブル通信網を構築しました。前者は主に工事関係者のコミュニケーション用、後者は複数台の4K~8K相当の高精細カメラで得られた映像などの同時伝送用にと利用用途を区別しています。また、従来の通信網は一筆書きの経路であるため、通信機器の故障や通信ケーブル断線が発生した場合、その問題箇所が起点となって全ての通信が途絶して、復旧するまで通信できない欠点がありました(図1-A)。今回の通信網は、通信ケーブルの断線が想定される作業箇所では、有線通信と無線通信を組み合わせ、複数の経路を有する通信網としています。これにより、通信切断が生じても問題箇所を回避した新たな通信経路に即座に切り替え、数秒で通信を再開することができます(図1-B)。これを可能とするネットワーク監視システム(図2)も構築して導入しています。


坑内作業における安全確認やデータ分析のための映像通信では、データ損失や遅延が許されないことから、今回構築した可用性と信頼性の高いこの通信形態が威力を発揮します。この通信網は、今後世の中で導入が進められる建設機械の遠隔操作において、トンネル坑外の運転手が肉眼で見た情報と映像は遜色なく、周辺状況の確認にも有効と考えています。


図1:従来の通信網(上段A)と新しい通信網(下段B)の比較

図1:従来の通信網(上段A)と新しい通信網(下段B)の比較

図2:ネットワーク監視システムの表示イメージ

図2:ネットワーク監視システムの表示イメージ


【参考】

◆鉄道・運輸機構について

鉄道・運輸機構は、現場で実施する監督検査業務の更なる高度化を目的として、2024年4月に発表した「建設DX ビジョンロードマップ」(注2)において、「監督検査関係のロードマップ」内で、遠隔臨場の適用拡大を進めて原則化に向けて取り組んでいきます。


◆安藤ハザマについて

安藤ハザマ「DXビジョン2030」(注3)では、「建設分野での知識や知見をDXでパワフルに活かし働き方を改革する」としています。山岳トンネル工事の生産性、安全性を大幅に高める取り組みとして、「i-NATM(R)」(山岳トンネル統合型掘削管理システム)(注4)を開発し、社内展開を進めています。今回の情報通信基盤の構築に加えて、ローカル5G(注5)やbeyond5G(6G)の積極的な活用も視野に技術改良を進めていきます。

また、i-Construction2.0(注6)で扱われるデータの高速化・大容量化への対応として、光電融合技術をベースとする次世代通信技術IOWN(注7)にも耳目が集まっており、このような新たな技術を取り入れることで、建設工事のフルオートメーション化の実現と安全性の向上を図っていきます。


(注1)鉄道・運輸機構リリース

「新幹線建設工事において遠隔臨場の実証によりDXを促進」(2021年11月9日)参照

https://www.jrtt.go.jp/corporate/public_relations/pdf/2021.11.04_DX.pdf

(注2)鉄道・運輸機構の建設DX ビジョンロードマップ

https://www.jrtt.go.jp/construction/technology/dx.html

(注3)安藤ハザマ「DXビジョン2030」

「各自の生活スタイルに応じた、メタバース空間を活用した新しい働き方」「急速に進化する建設事業を牽引し、新事業を展開するための能力の拡張」「蓄積されたナレッジをAIで活用することによる生産性の向上」の3つを柱(未来の業務環境)に据えて、2030年までの達成を目指している。

(注4)安藤ハザマリリース

「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM(R))」の開発(2020年9月18日)参照

https://www.ad-hzm.co.jp/info/2020/20200918.php

(注5)安藤ハザマリリース

「トンネル内での建設作業効率化および安全性向上に向けたローカル5G検証を実施」(2023年2月2日)参照

https://www.ad-hzm.co.jp/info/2023/20230202.php

(注6)i-Construction2.0

https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html

(注7)IOWN

Innovative Optical and Wireless Networkの略。最先端の光技術などを使って豊かな社会を創るためのネットワーク基盤構想。



<本件に関するお問い合わせ先>

鉄道・運輸機構

(北海道新幹線に関すること)

北海道新幹線建設局 総務部 広報・渉外課

TEL:011-231-3456

(鉄道・運輸機構 建設DX ビジョンに関すること)

建設企画部 技術企画・安全推進課

TEL:045-222-9063


安藤ハザマ

コーポレート・コミュニケーション部広報グループ

TEL:03-3575-6094

カテゴリ:
企業動向
タグ:
安藤ハザマ JRTT 建設DX
取材依頼・商品に対するお問い合わせはこちら

プレスリリース配信企業に直接連絡できます。

プレスリリース配信 @Press

記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)