安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)は、ICTにより山岳トンネル工事の生産性、安全性を大幅に高める取り組みとして「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM(R))」の開発を推進しています(注1)。
この度、ニシオティーアンドエム株式会社(本社:大阪府高槻市、代表取締役社長:北 俊介)と共同で開発した山岳トンネル工事における吹付けコンクリートの自動施工技術(注2)を、施工中の北海道新幹線、後志トンネル(天神)他工事(発注者:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局、以下、「後志トンネル(天神)他工事」)(注3)に適用し、山岳トンネル工事における吹付けコンクリートの施工が無人化可能であることを確認しました。
1. 技術の特長と後志トンネル(天神)他工事への適用状況
本技術は、「(1)切羽出来形取得プログラム」「(2)位置情報演算プログラム」「(3)油圧制御プログラム」の3つのプログラムから構成され(図1)、オペレータは吹付け機に付属するタブレットの簡単なボタン操作のみで、吹付けコンクリート施工の一連の動作を自動で行うことができます。
(1)切羽出来形取得プログラム
吹付け機前方に設置したLiDARを用いて取得した切羽の三次元データをもとに、吹付けコンクリートの必要数量を算出します。また、吹付けコンクリート施工前後の三次元データの差分から、吹付けコンクリートの厚さを特定し、吹付けコンクリートの出来形を確認します。
(2)位置情報演算プログラム
(1)の切羽出来形取得プログラムにて取得した三次元データをもとに、吹付けコンクリートの施工範囲を選択し、自動で施工するための吹付けノズルのルートを算出します。さらに、算出したルートをもとに吹付けノズル先端の位置目標を決定し、吹付けノズルの角度と位置を制御します。
(3)油圧制御プログラム
(2)の位置情報演算プログラムにおいて決定した吹付けノズル先端の位置目標をもとに、吹付け可能範囲を判定し、吹付けロボットの油圧制御を行います。吹付け機の油圧回路に比例電磁弁を追加し、コントローラからの出力電流を可変させることで、各アクチュエータ(エネルギーを機械的な往復運動や回転運動に変換する装置)の速度、ストロークをコントロールします。
後志トンネル(天神)他工事では、本技術の活用により、吹付けコンクリートの施工の無人化実現に向けて取り組んでいます。
模擬トンネルで動作確認を行った吹付けコンクリートの自動施工技術(注2)のシステム一式を実際の吹付け作業に適用し、「吹付けコンクリートの必要数量の算出」、「吹付けコンクリートの自動施工」、「吹付けコンクリート施工後の厚さの特定」など、本技術が有する一連の機能が実施工中のトンネルにおいても想定どおりに動作することを確認しました(写真1、2、図2)。
2. 今後の展開
今後、後志トンネル(天神)他工事での運用を通して、はね返り率などの施工性について検証を進め、抽出した課題をもとに、機能の改善を繰り返していくことで、本技術の成熟を目指します。
また、後志トンネル(天神)他工事では、吹付けコンクリートの施工技術に加えて、発破の高度化技術と全自動ドリルジャンボを連携させることによる穿孔作業の完全自動化にも取り組んでおり(注4)、将来的な山岳トンネルにおける無人化施工の実現に向けて、技術開発を推進していきます。
(注1)山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM(R))
自動化、遠隔化技術を活用して施工技術の高度化を図るとともに、施工情報を集中管理するプラットフォームを構築し、山岳トンネル施工の抜本的な合理化を進めるもの。
(注2)吹付けコンクリートの自動施工技術
安藤ハザマ2024年11月20日リリース資料を参照
https://www.ad-hzm.co.jp/info/2024/20241120.php
(注3)北海道新幹線、後志トンネル(天神)他工事
発注者 :独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 北海道新幹線建設局
施工者 :安藤ハザマ・伊藤・堀口・泰進北海道新幹線、後志トンネル(天神)他
特定建設工事共同企業体
工期 :2019年11月1日~2026年12月7日
工事概要:トンネル施工延長4,460m、幅員約10m、高さ約8m
(注4)発破の高度化技術を活用した穿孔作業の完全自動化
安藤ハザマ2021年10月18日リリース資料を参照
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