BSI(英国規格協会)、高級ファッションブランドの未来に対する 消費者意識と企業の取り組みに関するレポートを発表
エンドツーエンドの持続可能性が成功の鍵に
本プレスリリースは2025年2月12日(英国時間)に英国で配信されたプレスリリースの抄訳版です。
2025年2月12日:英国規格協会(British Standards Institution、以下「BSI」)は、世界各国でファッションウィークが開催されるのに合わせ、新たなレポート『From source to shelf: Creating sustainable fashion for the future(素材・販売・再生のサステナブルな取り組みとは:未来に向けた持続可能なファッションのために)』を発表しました。このレポートでは、調達から販売に至るあらゆる工程において持続可能性を考慮せずに展開している高級ファッションブランド企業は、消費者がそのようなブランドを敬遠する傾向ならびに、各国で規制が強化される中で、将来の存続が危ぶまれると指摘しています。
BSI(英国規格協会)、新たなレポート「素材・販売・再生のサステナブルな取り組みとは:未来に向けた持続可能なファッションのために」を発表
レポートでは、持続可能な素材利用やエシカル調達に取り組んでいない高級ファッションブランドには、消費者からの信頼を失ったり、規制に基づいた制裁対象となるなどのリスクがあることを明らかにしています。
また、高級ファッション業界が企業活動全体に持続可能なビジネスプラクティスを浸透させる上での障害を調査し、それを解決するための戦略を提示しています。初期のデザイン工程から人権問題への取り組み、安全な労働条件の確保、あるいはブロックチェーンの活用による素材のトレーサビリティの向上に至るまで、エンドツーエンドの持続可能性をどうすれば取り入れられるかについての指針を示しています。
レポートの内容は、世界の人々の約3分の2(63%)が商品購入を決める際に、企業の社会および環境に対するパーパスを考慮し、同様に63%はそのパーパスと矛盾する行動を取る企業やその製品を避けると回答しています。さらに、消費者の4分の3は、環境に関する主張が確たるエビデンスによって検証、認証、または裏付けられている場合、その企業をより好意的に受け止める傾向があるとするBSIの調査結果(Work underway on first global corporate purpose standard)に基づいています。
高級ファッションブランドも、特にEUにおいて、変化を続ける規制環境に適応しなければなりません。現在、欧州グリーンクレーム指令(GCD)では、環境訴求を行う企業に対して明確な証拠の提示を義務付けており、グリーンウォッシング(環境に配慮しているように見せかける行為)を排除し、罰金や市場からの排除、その他の制裁を科しています。この指令では2026年3月までの遵守が義務付けられており、証拠を伴わない包括的な環境訴求や、誤解を招くカーボンオフセットに関する訴求、無許可の持続可能性ラベルに関する制限なども含まれています。
さらに、高級ファッションブランドは、2030年までにEUで義務化される予定の規制枠組みであるデジタル製品パスポート(DPP)への体制も整えなければなりません。このイニシアチブでは、製品の原産地、素材、製造工程、リサイクル性などを記載した仮想ラベルを製品に貼付することが義務付けられます。
また、レポートでは、高級ブランドが常に時代の先端にいるために考慮すべき4つの優先分野について解説しています。
● コンセプトとデザイン:デザイン工程の初期に持続可能性を組み込むことで、透明性の向上と環境負荷の低減を実現し、オーガニックコットンや再生ポリエステル、TENCEL(TM)、竹、ヘンプなどの植物由来の代替素材の採用を検討すること。
● 原材料:環境、社会、倫理的影響を考慮した責任ある調達を確保するためのエシカル調達とサプライヤーとの協働に関する指針を定めること。
● 生産と製造:水資源の消費や脱炭素化といった環境課題を考慮しながら、サプライチェーン全体で公正な賃金、安全な労働環境、強制労働の排除などの人権問題にどのように対応するか検討すること。
● 販売とその後:販売店舗からの二酸化炭素排出量を削減するための持続可能な小売戦略の策定、ブロックチェーンの活用による原材料の追跡と循環経済の原則の導入、製品のライフサイクルを延長するための再販、レンタル、リサイクルの取り組みを推進すること。
服飾および靴を含む高級ファッション市場規模は、2024年までに1,159億米ドルに達し、2028年までに1,316億7,000万米ドルに成長すると予測されています。これまで高級感と高品質な職人技が特徴とされてきた市場ですが、消費者の意識は変化しており、商品を購入する際に持続可能性が重要な要素であることが明らかになっています。
BSIの消費者・小売・食品担当のグローバルディレクターであるNicolas Carneiroは次のように述べています。
「持続可能な未来への道のりは、もはや高級ファッション業界にとって“あれば望ましい”という目標ではなく、EUの新たな規制や、私たちの調査で示された消費者の行動の変化に裏付けられた通り、長期計画の重要な一部となっています。しかし、リスクというよりもむしろ、この分野で対策を講じることは差別化要因となり、社会や環境に多大な恩恵をもたらす可能性を持つ企業だと認知されるようになるでしょう。
高級ファッションブランドは、業界全体をより持続可能で責任ある未来へと導く、かつてない機会を得ています。調達や生産から小売、消費者との接点に至るまで、持続可能性を全面的に取り入れることで、規制上の要求を満たしながら、消費者の信頼を強化し、持続可能な卓越性に関する新たな基準を打ち立てることが可能になります」
詳細情報およびレポート全文は、こちらのページからダウンロードいただけます(英語)。
https://page.bsigroup.com/l/73472/2024-12-18/2cb2py3
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、ビジネス改善と標準化を推進する機関です。設立以来1世紀以上にわたって組織や社会にポジティブな影響をもたらし、信頼を築き、人々の暮らしを向上させてきました。現在190を超える国と地域、そして80,000社以上のお客様と取引をしながら、専門家、業界団体、消費者団体、組織、政府機関を含む15,000の強力なグローバルコミュニティと連携しています。BSIは、自動車、航空宇宙、建築環境、食品、小売、医療などの主要産業分野にわたる豊富な専門知識を活用し、お客様のパーパス達成を支援することを自社のパーパスと定めています。気候変動からデジタルトランスフォーメーションにおける信頼の構築まで、あらゆる重要社会課題に取り組むために、BSIはさまざまな組織と手を取り合うことによって、より良い社会と持続可能な世界の実現を加速し、組織が自信を持って成長できるよう支援しています。
BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよび研修サービスの提供を主業務とし、また規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。
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