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【岡山理科大学】恐竜時代に生きた新属新種の哺乳類化石をモンゴル・ゴビ砂漠で発見

調査・報告
2025年4月9日 11:00
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当時の復元画。ゴビハドロス(恐竜)の足の上に乗るラウジャア・イシイイ(手前の哺乳類)のイメージ図 ©府高航平
当時の復元画。ゴビハドロス(恐竜)の足の上に乗るラウジャア・イシイイ(手前の哺乳類)のイメージ図 ©府高航平
 岡山理科大学とモンゴル科学アカデミー古生物学研究所(IPMAS)の共同調査隊が、モンゴル・ゴビ砂漠の白亜紀後期(1億年~6600万年前)の地層で発掘した哺乳類化石が新属新種の標本であることが分かり、「Ravjaa ishiii」(ラウジャア・イシイイ)と命名。4月4日、岡山理科大学で記者会見して発表しました。共同調査隊は、同じ地層で他の小型脊椎動物化石も確認していることから、新たな動物相の理解へつながる極めて重要な発見の一部になる可能性がある、とみています。
 研究成果はオンラインの国際学術誌「Acta Palaeontologica Polonica」70号(1)に掲載。論文は同号の「Editors’ Choice(編集部推薦論文)」に選出されました

 共同調査隊は2019年、ゴビ砂漠東部に分布する白亜紀後期の地層「バインシレ層」から小型脊椎動物化石を多数発見し、詳細な検討を行ってきました。
 その結果、わずか1㎝ほどの下顎骨の歯や顎などの形態から、哺乳類の中でも白亜紀に生息していたゼレステス科に属することを確認。また、他のゼレステス科の標本群と下顎骨後部の形態が異なり、下顎骨に対して臼歯が高いなど既知のゼレステス科とは違う特徴を持つ新属新種であることを突き止めました。大きさはハツカネズミほどとみられています。

 モンゴルでゼレステス科の化石が確認されたのは初めてです。世界的に分布していたと考えられるこのグループは、これまで大陸周辺の沿岸地域から産出していますが、今回の発見で大陸の内陸部にも進出しており、多様な地域や環境に適応して生息していたことも判明しました。
 この化石を産出した地層の年代は、被子植物の出現と拡散に伴い、哺乳類を含む多くの陸上動物が多様化したと考えられています。今回発見された哺乳類化石は、種子や果実を食物とする哺乳類に類似した歯の特徴をもち、共同調査隊は「本標本を含む真獣類哺乳類が被子植物由来の新たな資源を利用し始めたことを示す貴重な記録であると言える」とし、さらに「恐竜類を含む豊かな陸上動物相が現在のゴビ砂漠一帯に存在していたことを示唆している」としています。

 ラウジャア・イシイイの名称は、産出地周辺で広く尊敬されている19世紀の高僧の名前と、本学が行うモンゴルでの化石発掘調査の基盤を構築した林原自然科学博物館の元館長、石井健一氏(故人)に敬意を表して命名されました。
 記者会見したのは岡山理科大学大学院理工学研究科=博士課程(後期)3年=の大越司さんと、同大生物地球学部恐竜学科の千葉謙太郎講師、實吉玄貴教授。IPMASのブーベイ・マインバヤルさんもオンライン参加しました。

 論文の筆頭著者の大越さんは「コロナ禍の影響により、論文化に時間がかかりましたが、本標本の学術的な位置づけを明確にすることができました。本成果を出発点とし、今後は同じ場所や時代より産出する様々な小型脊椎動物化石の分類学的検討を進め、恐竜時代のゴビ砂漠に存在したであろう、恐竜を含む豊かな動物相の解明に貢献したい、と考えています」と話しています。
 また、實吉教授は「あの広大なゴビ砂漠で、こんな小さな化石が見つけられたのは、ゴビの神様からのご褒美としか思えない」と奇跡的な発見を強調しました。
 岡山理科大学恐竜学博物館では、ラウジャア・イシイイのレプリカ標本(原寸大および拡大復元)を一般公開しています。
研究結果を発表する大越さん
研究結果を発表する大越さん
哺乳類化石産出層(左)と小型脊椎動物化石の取り出し作業(右)
哺乳類化石産出層(左)と小型脊椎動物化石の取り出し作業(右)
研究対象となった哺乳類化石の3方向からの画像(IPMAS所蔵・保管)
研究対象となった哺乳類化石の3方向からの画像(IPMAS所蔵・保管)
系統樹
系統樹
発見の意義を解説する千葉講師
発見の意義を解説する千葉講師
発見の経緯を説明する實吉教授
発見の経緯を説明する實吉教授
IPMASのマインバヤルさんもオンラインで参加しました
IPMASのマインバヤルさんもオンラインで参加しました
記者会見の様子
記者会見の様子