WEF技術開発、自社技術で高濃度PFAS処理に成功 低コスト、メンテナンスフリーで長時間・大量処理が可能に
水(Water)、エネルギー(Energy)、食料(Food)の地産地消技術開発に取組んでいるWEF技術開発株式会社(所在地:滋賀県大津市、代表取締役:青山 章)は、この度、世界的に問題になっている水中PFAS(有機フッ素化合物)の除去に成功しました。処理技術は2種類あり、共に低コストで、メンテナンスもほぼ不要の処理ですので、大規模水処理利用に期待されます。
■PFAS処理定説を覆す
PFASは、別名「永遠の化学物質」とも呼ばれており、熱に対する耐性や化学的安定性が高い化学物質です。厚生労働省の見解によりますと、従来の浄水方法(凝集沈殿ろ過・オゾン処理・消毒処理など)では、PFASの除去は期待できないとされています。
例えば、「凝集沈殿で硫酸バンド添加量を110mg/Lの高濃度とするとPFOA/Sは30%程度回収できるが、通常の添加条件では回収は期待できない。OHラジカルによる促進酸化法(AOP)だけではPFOA/Sは分解できない。そもそもOHラジカル(・OH, E0=1.9~2.85V, E0は標準酸化還元電位)と有機物の反応は、炭素原子間の不飽和結合への付加反応、芳香環での置換反応、標的分子からの水素の引抜きである。炭素間の不飽和結合、芳香環、非イオン性の水素いずれも有さないPFOA/Sには、OHラジカルによるAOPは無効である」(総説(査読付)「水中のPFOSとPFOAの分解技術の研究開発の経緯と最近の動向」)と説明されています。
このように定説では処理できないとされる凝集沈殿と活性酸素を利用した当社の特許技術で、今回高濃度PFOA/Sが凝集沈殿若しくは活性酸素分解できることを確認いたしました。
■処理試験結果
まず、処理結果を記載します。
1) 処理剤「TERRAST(テラスト)」による凝集沈殿処理
PFOS:原水濃度(50μg/L) - (24H処理)→ 3.6μg/L(93%除去)
PFOA:原水濃度(50μg/L) - (24H処理)→ 12μg/L(76%除去)
2) 活性酸素触媒処理
PFOS:原水濃度(50μg/L) - (24H処理)→ 10.5μg/L(79%除去、2回の平均)
PFOA:原水濃度(50μg/L) - (24H処理)→ 43μg/L(14%除去、2回の平均)
※高濃度PFASで処理確認しました。活性酸素によるPFOA以外は非常に効果的な処理結果となりました。
≪処理剤「TERRAST」による処理≫
(1) 処理剤「TERRAST」とは
特殊な炭とアルミを固着させた粒子を、隙間を多く持たせてタブレット状に固化させたものを「TERRAST」と呼び、これを水中に入れると、電位の差で炭からアルミニウムに電流が流れ、水中にアルミニウム陽イオンが供給されます。アルミイオンはすぐさま水酸化アルミニウムコロイドに生成され、このコロイドは正に帯電しているため、水溶液中に含まれるマイナスに帯電した金属などの不純物が電気的に水酸化アルミニウムコロイド表面に引き寄せられて吸着して沈殿します。
画像(1)TERRASTと処理メカニズム
(2) 処理効果
画像(2)処理効果
「TERRAST」処理の特徴
・ほとんどの重金属、フッ素、アンチモン、水銀、カドミウム、ヒ素等も効率よく凝集処理
・6か月間安定的にアルミイオンが溶出
・低濃度処理もクリア
・沈殿物発生が非常に少ない
■今回の「TERRAST」によるPFAS処理
PFOS(50μg/L)とPFOA(50μg/L)を調合した試験液を分析機関で造っていただき、「TERRAST」1個を入れた1Lメスシリンダーに調合液を入れ、エアレーションで撹拌しました。
画像(3)TERRAST試験
※「TERRAST」から溶出するアルミイオンが水酸化アルミニウムになり、PFASを凝集、沈殿します。
凝集、沈殿効果が非常に大きく、他の凝集剤のように後段に高分子凝集剤等の処理は不要です。
そのため、発生沈殿物はほぼ処理対象物だけですので、PFAS処理の場合「TERRAST」交換時(6ヶ月)の引抜きで済むのではないかと考えています。
◆処理プロセスと納入実績
画像(4)処理プロセス
画像(5)納入実績
≪活性酸素触媒によるPFAS処理 ~活性酸素触媒処理とは~≫
世界随一の技術である空気中酸素から活性酸素を生成し、そこにオゾンを少し加えてイオン化したオゾン(オゾニドイオン)を作ります。オゾニドイオンは水と接触するとすぐさまヒドロキシラジカルになり、水中有機物を分解します。今回はさらに触媒を利用することで、処理効率をオゾンの20倍近くに高めました。
■今回の活性酸素触媒によるPFAS処理
分析機関で特注で造っていただいたPFOS(50μg/L)とPFOA(50μg/L)を調合した試験液を容器に入れ、活性酸素を散気管供給し、接触効率を上げるために溶液を撹拌しました。触媒はカラムに入れ、水中ポンプでPFAS溶液を循環させました。
処理内容
処理水:PFOS(50μg/L)、PFOA(50μg/L)混合溶液3L
AOS :オゾン=6:2、触媒:50g
画像(6)活性酸素触媒処理
■試験結果
画像(7)試験結果
■期待される「TERRAST」、「活性酸素触媒」処理
PFASは環境中で広範囲に拡散し、水に溶解します。必然的にPFAS汚染水の処理量は多大なものとなり、現在処理可能とされている活性炭吸着、イオン交換樹脂、逆浸透膜処理ではコスト面から導入が躊躇されています。
今回の「TERRAST処理」の場合、処理水槽と「TERRAST」を循環させるだけで6か月間メンテナンスフリーですし、ほぼ水中PFASだけが沈殿しますので、沈殿量が少なく確実に分離回収可能になります。沈殿量が少ないということは、2次処理(焼却等)負荷が大幅に削減されます。
「活性酸素触媒処理」の場合も、活性酸素、オゾンとも空気中酸素由来ですので、メンテナンスはフリーです。触媒に吸着したPFASやその他有機成分はほぼ完全に分解されますので、触媒の交換は不要です(1回/年程度に性能確認)。活性酸素処理は完全酸化分解ですので、2次処理は不要となります。
今回の試験でPFOA処理に効果が少なかったのは、付加されている酸の違いなどによると考えられるため、PFOAをよく吸着する触媒での再試験を考えています。
処理量に比例して「TERRAST」若しくは「活性酸素触媒」を増やすことで、大量の処理水にも対応は可能となります。
「TERRAST」により抽出・濃縮されたPFASの焼却処理が難しい場合、「活性酸素触媒処理」で分解するという2段階利用も効果的と考えます。
■迫りくる規制と責任
PFASは、消費者向け製品、泡消火薬剤、フッ素ポリマーの生産において数十年にわたって使用されてきました。現在では、環境中だけでなく人体にも広く存在しています。PFOAとPFOSは日本ではもはや使用も生産もされていませんが、各地の飲料水源を汚染しています。
人体への影響が判明してくるにつれて、規制はどんどん厳しくなっていくと思われます。その時に責任を負わないためにも、汚染物質は早目に分解処理する必要があります。PFASの浄化には、いくつもの技術が活用される可能性があると思われますが、当社の技術もその中の一つとして検討いただければ幸いです。
■会社概要
商号 : WEF技術開発株式会社
代表者 : 代表取締役 青山 章
所在地 : 滋賀県大津市堂1-19-15
設立 : 2016年7月
事業内容: 水処理、廃棄物リサイクル、殺菌鮮度保持、
高効率環境低負荷エンジン等開発
URL : https://aoyama-wefit.com
https://mgworld.aoyama-wefit.com/ (マグネシウムワールド)