IEEEがプレスセミナーを開催『ビッグデータを活用した放射線...

IEEEがプレスセミナーを開催 『ビッグデータを活用した放射線測定の新トレンド』

IEEE(アイ・トリプル・イー)は、東日本大震災から3年をまえに『ビッグデータを活用した放射線測定の新トレンド』と題したプレスセミナーを2014年2月19日(水)に開催いたしました。
今回は、IEEEメンバー田中 健次先生(電気通信大学 大学院情報システム学研究科 教授)、IEEEメンバー松本 佳宣先生(慶應義塾大学理工学部 物理情報工学科 教授)、ヤグチ電子工業株式会社 石垣 陽氏の3名にご登壇いただきました。

当日のセミナーの様子
当日のセミナーの様子

今回のセミナーでは、東日本大震災・福島原発事故での放射線モニタリングを事例とする、災害時におけるSNS(ソーシャルネットワークシステム)の活用方法を紹介し、原発事故発生直後の状況として、放射線測定機の不足による情報の混乱、モニタリング数値の共有の遅れ、専門家と一般市民との議論の場がないなど、従来の情報伝達におけるさまざまな脆弱性が明らかになりました。
「正確な線量を早く知りたい」という市民の要望から、セミナーでは、SNSを活用することにより、震災後わずか半年で線量計を開発し発売できた事、また、計測結果を市民が共有できた事の2点を紹介しました。


■スピード商品化のカギは、「参加型システム開発」
スマートフォン接続型線量計「ポケットガイガー」(添付写真)は、その開発にあたり、設計段階からSNS上で情報をオープンにし、専門家・技術者・市民を問わず様々な技能を持つ人に開発の参加を募りました(=参加型システム開発)。ここで集まった国内外の人たちが相互協力することで、政府や民間企業による今までの流れにはない、異例の速さで製品を商品化しました。ヤグチ電子工業株式会社 石垣 陽氏は次のように述べています。「この開発方法により、PINフォトダイオードセンサの使用、組み立てキット化するなど画期的な手法を採用し、迅速に高性能かつ低価格なものを作ることができ、さらに精度評価、測定結果の共有までが可能となりました。」

【スマートフォン接続型線量計 ポケットガイガーType4】
(累計販売数約5万台・税込6,450円)
・iPhone/iPad/iPodに対応
・高感度PINフォトダイオードセンサ搭載
・約2分で高精度測定
・電池不要のコンパクトサイズ
※インターネットで購入できるほか、一部家電量販店およびau店舗でも購入可能。
※設計および製造は石巻市で行っており、被災地の雇用維持に役立っています。


■SNS活用で、市民が自ら判断・行動できる時代へ
「ポケットガイガー」を購入したユーザーは、スマートフォンGPS、パケット通信を通じて自分のいる位置の線量測定結果をアップし、同時に他のユーザーと結果を共有することができます。IEEEメンバーの田中 健次先生は次のように述べています。「このように、全体の情報(ビッグデータ)を共有して個人が行動するということに私たちは着目し、災害時の新しい情報伝達システムの開発に取り組んでいます。従来、災害時には専門家の判断、指示を受けたのちに行政が避難勧告を出すといった流れが一般的でしたが、これでは市民が避難するまでに時間がかかってしまいます。将来は市民が自主的に情報を収集し、予測して動く流れを作ることにより、安全性が高まるのではないかと考えています。」
さらにSNSの利点は、SNSを通じて他のユーザーや専門家と直接議論することにより、不足していた知識を得たり、不安・疑問点を解消できたりすることであると田中先生は指摘しています。


■SNS活用は、技術革新のキーワード
「ポケットガイガー」は、発売後も、SNS上でユーザーや専門家の情報交換によって出た改善点を集約し、数カ月~半年に一回の頻度でバージョンアップしています(=ラピッドプロトタイピング)。この他、学校や農家等が自由に使えるような小型・低価格の線量モニタリングネットワークシステムや、Androidタブレット式記録計の開発なども現在進行中です。このようなモニタリングシステムの開発について、IEEEメンバーの松本先生は次のように述べています。
「線量モニタリングシステムの開発は、市民へ安全な情報を提供するだけでなく、システムを海外に輸出することで被災地の企業活性化にも結びつきます。また現在、ビッグデータとSNSの活用により、いろいろなところで“次世代インターネット革命”が起こっています。それはたとえば農業情報を集めて制御する、地震の情報をSNSでキャッチするなどといったことですが、私たちが開発しているシステムが、この革命へのひとつのキーテクノロジーとなるのではないか、と期待しています。」


■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門家の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、活動を通じて世界中の工学やその他の技術専門職のための信用性の高い「声」として役立っています。

IEEEは、電気・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版2000以上の現行標準を策定し、年間1,300を超える国際会議を開催しています。
詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

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