トルラ酵母由来β-グルカンの生理活性と機能化 「第69回高分子学会年次大会(2020年5月29日)」にて学会発表
三菱商事ライフサイエンス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:藤木 洋)では、微生物による発酵技術を中心とした研究開発を進めています。当社バイオサイエンス研究所では、自社で製造するトルラ酵母(Candida utilis)由来のβ-グルカン類の生理活性と機能材料化に関して崇城大学(熊本県熊本市、学長:中山 峰男)と共同研究を行ってきました。その中で、β-グルカンにヒドロゲル形成能や3重らせん構造内部へ機能性分子を取り込む機能があることを確認しました。また、生理活性機能として、腎疾患の発生を抑制する―可能性も示唆されました。
本研究結果を、「第69回高分子学会年次大会(2020年5月29日)」にて発表します。
【主な研究成果】
・トルラ酵母を原料として分離取得されたβ-グルカンはヒドロゲル形成能を有しており、加熱によって体積収縮を起こす熱応答性ゲルであることを確認した。
・得られたβ-グルカンは、その3重らせん構造内に、カーボンナノチューブなどの機能性分子を取り込む機能を有することを確認した。
・この機能を利用して、カーボンナノチューブの他、疎水性色素、紫外線吸収剤を可溶化することにも成功し、医薬品や化粧品材料への応用が期待される。
・また、ラットへの経口投与試験の結果、体内尿素窒素と血清クレアチニンの濃度低下がみられ、腎疾患を抑制する生理活性機能が示唆された。
【第69回高分子学会年次大会* 発表概要】
日時 :2020年5月29日
演題名:トルラ酵母由来β-グルカン類の生理活性と機能化
発表者:田丸 俊一(1)、安楽 誠(2)、庵原 大輔(2)、福田 雄典(3)、阿孫 健一(3)、梶 直人(3)
((1)崇城大学工学部・(2)崇城大学薬学部・(3)三菱商事ライフサイエンス株式会社)
*第69回高分子学会年次大会は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、開催中止となりましたが発表者の発表は、正式な発表として取り扱われます。
<第69回高分子学会年次大会 発表要旨>
【目的】
トルラ酵母(Candida utilis)は食経験豊富な酵母であり、β-グルカンを含む食物繊維やタンパク質、RNAなどを多く含んでいる。本研究は、トルラ酵母由来のβ-グルカンに着目し、化粧品素材や健康素材、化学材料への応用を目指して検討を行った。トルラ酵母由来β-グルカンについて構造解析、物性評価及び生理活性評価を行った。さらに、β-グルカンと機能性分子との複合材料の構築とその物性について評価した。
【方法】
トルラ酵母を次亜塩素酸で処理することで取得したβ-グルカン(以下、当該素材)を用いて検討を行った。当該素材を分光学的手法により構造解析を行い、物性評価並びに機能性分子との複合化実験を実施した。また、腎不全ラットに経口投与することで、体内尿素窒素や血清クレアチニンの濃度変化を観察した。
【結果】
トルラ酵母を次亜塩素酸で処理することで当該素材を取得した。当該素材は主鎖であるβ-1, 3 結合と側鎖であるβ-1,6 結合の比が概ね3:1であることを確認した。また、当該素材は高いヒドロゲル形成能を有し、加熱によって体積収縮を起こす熱応答性ゲルであることが確認された。また、3重らせん構造を有することを確認し、その内部にカーボンナノチューブを取り込むことに成功した。加えて、カーボンナノチューブや疎水性色素や紫外線吸収剤を水溶化することにも成功した。
腎不全ラット対して当該素材を経口投与した結果、体重変化や血圧変化を示すことなく、体内尿素窒素や血清クレアチニンの濃度低下が認められた。
記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)