「もし新型コロナウイルスの感染対策を何もしなかったら…?」 愛知県の高1女子が感染対策の効果を数学的に実証し MATHコン2020「日本数学検定協会賞」を受賞
算数・数学の実用的な技能を測る「実用数学技能検定(数学検定・算数検定、以下「数検」)」を実施・運営している公益財団法人日本数学検定協会(所在地:東京都台東区、理事長:清水 静海、以下「当協会」)は、一般財団法人理数教育研究所が主催している「塩野直道記念 第8回『算数・数学の自由研究』作品コンクール」(通称「MATH(マス)コン」)の優秀賞の1つである「日本数学検定協会賞」を決定し、2020年12月20日(日)に東京都内で行われたオンライン表彰式で受賞者を表彰いたしました。
受賞したのは、「もし新型コロナウイルス(COVID-19)の感染対策をしなかったら…?」をテーマに、ソーシャルディスタンスや分散登校などの感染対策の効果を数学的にモデル化して実証した作品を応募した愛知県の高校1年生の女子生徒です。
塩野直道記念「算数・数学の自由研究」作品コンクール公式サイト
https://www.rimse.or.jp/research/
■「なぜ?」「本当?」「どうなる?」からはじまる算数・数学の自由研究
今年2020年で第8回の開催となる塩野直道記念「算数・数学の自由研究」作品コンクールは、全国の小学生・中学生・高校生を対象に、日常生活や社会で感じたさまざまな疑問を算数・数学の力を活用して解決する、あるいは、算数・数学の学びを発展させて新たな数理的課題を探究するなかで気づいたことやわかったこと、自らの解決の方法などをレポートにまとめ、作品として応募するコンクールです。テーマは自由で、毎年さまざまなテーマの自由研究作品が集まります。なお、今年2020年の応募作品数は、合計11,397件でした(2019年は17,821件)。
■新型コロナウイルスの感染対策の効果を、数学的にモデル化して実証した高校1年生の作品が受賞
本コンクールに2016年から協賛している当協会は、すべての応募作品のなかから、とくに算数・数学の研究として優れたレポート1作品に優秀賞として「日本数学検定協会賞」を授与しています。今年2020年の「日本数学検定協会賞」は、「もし新型コロナウイルスの感染対策を何もしなかったら…?」をテーマに、ソーシャルディスタンスや分散登校などの感染対策の効果を数学的にモデル化して実証した作品を応募した愛知県在住の西川 結葉(にしかわ ゆいは/応募当時15歳、高校1年生)さんが受賞いたしました。
西川さんは、今現在も猛威をふるい続けている新型コロナウイルスの感染者数について、テレビのニュースなどでの報道を毎日見ているうちに、感染対策をしなかった場合の感染力がどのくらいなのか疑問に思うようになり、実際に自分で計算して研究することにしました。研究では、以下の内容について計算し考察しています。
(1)感染拡大スピードの予測
感染者が1人発生したあと、何も感染対策をしなかった場合、どのくらいのスピードで感染拡大するか。自分なりに条件をいくつか設定したうえで、30日後にどれくらい感染が広がっているかを計算する。
(2)学校のクラスでのクラスター発生予測
学校の教室で感染者が1人発生した場合、何人に感染する可能性があるのか。「ソーシャルディスタンス」と「会話時間」という2つの観点から推定して、感染確率を計算する(計算にはインターネット上で公表されているデータを活用)。
(3)分散登校により、クラスでの感染クラスターはどれだけ減らせるか?
感染対策として行われた分散登校によって、1教室40席を半分の20席にしたとき、感染確率がどう変化するかを計算する。
<研究のまとめ>
感染対策を何もしなかった場合、指数関数的に増加する感染者数は、わずか18日で世界人口を超える結果となった。感染拡大のスピードに驚愕するとともに、今日本が感染者数を他国よりも抑え込んでいるのは感染対策が成果をあげているからだと感じた。また、教室という狭い空間でのソーシャルディスタンスを考えた場合、距離を1mから2mに増やすことで感染確率を約半分にできることも計算から求められた。このように実際に感染率の計算をしたことで、ソーシャルディスタンスの確保や接触人数を減らすなどの感染対策の効果を実感することができた。今後の課題として、感染対策としてマスクをつけた際に感染率がどれくらい低下するかについても研究していきたい。
算数・数学の実用的な技能を測る「数検」を実施している当協会は、2020年に世界中の多くの人々が身近に感じたウイルス感染症の脅威をテーマに調査研究し、数学的に考察していることが「日本数学検定協会賞」にふさわしいと考え、このたびの受賞を決定しました。
なお、西川さんの受賞コメントと応募作品への審査委員の講評は以下のとおりです。
<西川 結葉(にしかわ ゆいは)さんの受賞コメント>
まさかこんなすばらしい賞をいただけるとは思っていませんでした。ありがとうございます。身近な事象やふと疑問に思ったことを数値化していくことで、驚くべき結果に出合いました。今回の研究は、私にとってとても貴重な経験です。私たちの未来がより豊かになるように、これからも数学を楽しみながら学んでいきたいと思います。
<審査委員の講評>
マスクなどの対策をしなかった場合、新型コロナウイルスはどのように感染するかをテーマにした作品で、ウイルスの感染力をいくつか設定し、その感染拡大のスピード、40人の教室で机の距離や会話時間による感染確率の違い、さらに分散登校による効果を調べています。指数関数的にウイルス感染者が増える実態を伝え、感染確率やさまざまな条件の数学的なモデル化も明確で、図やグラフを用いた計算結果のまとめ方も見やすく、説得力のある作品です。
当協会は、主たる公益事業である「数検」の実施のほかに、今後も広く国民のみなさまに算数・数学を学習する大切さや、楽しさを伝える普及啓発事業を充実させていく所存です。
【塩野直道記念「算数・数学の自由研究」作品コンクール概要】
名称 : 塩野直道記念 第8回「算数・数学の自由研究」作品コンクール(2020年度)
主催 : 一般財団法人 理数教育研究所
協賛 : 株式会社 内田洋行/株式会社 学研ホールディングス/
公益財団法人 日本数学検定協会
応募資格: 小学生、中学生、高校生
※海外の日本人学校も含む。
※グループで応募する場合は、同じ学校の同学年の応募に限る。
審査 : 1. 小学校の部…低学年の部(1~3年)、高学年の部(4~6年)に分けて審査。
2. 中学校の部
3. 高等学校の部(高等専門学校3年次までを含む)
公式HP : https://www.rimse.or.jp/research/
※くわしくは、公式ホームページをご覧ください。
【実用数学技能検定について】
「実用数学技能検定」(後援=文部科学省、対象:1~11級)は、数学・算数の実用的な技能(計算・作図・表現・測定・整理・統計・証明)を測り、論理構成力をみる記述式の検定で、公益財団法人日本数学検定協会が実施している全国レベルの実力・絶対評価システムです。おもに、数学領域である1級から5級までを「数学検定」と呼び、算数領域である6級から11級、かず・かたち検定までを「算数検定」と呼びます。第1回を実施した1992年には5,500人だった年間志願者数は、2015年以降は35万人を超え、また、2016年以降は実用数学技能検定を実施する学校や教育機関も17,000団体を超えました。以来、累計志願者数は600万人を突破しており、いまや数学・算数に関する検定のスタンダードとして進学・就職に必須の検定となっています。日本国内はもちろん、フィリピンやカンボジア、インドネシア、タイなどでも実施され(累計志願者数は30,000人以上)、海外でも高い評価を得ています。※志願者数・実施校数はのべ数です。
【ビジネス数学検定について】(当協会の行うその他のおもな公益事業)
「ビジネス数学検定」は、ビジネスの現場で必要となる実用的な数学力・数学技能を測定する検定です。実務に即した数学力を5つの力(把握力・分析力・選択力・予測力・表現力)に分類し、ビジネスのシチュエーションを想定した問題で、これらの力の習熟度を測定します。インターネット上で受検できるWBT(Web Based Testing)方式を採用。2006年に第1回を実施し、現在では企業の採用試験や新人研修、管理職登用試験などに活用する事例も増加しています。
【法人概要】
法人名 : 公益財団法人 日本数学検定協会
所在地 : 〒110-0005 東京都台東区上野5-1-1 文昌堂ビル6階
理事長 : 清水静海(帝京大学大学院 教職研究科長・教授、
公益社団法人日本数学教育学会名誉会長)
会長 : 甘利 俊一(理化学研究所 栄誉研究員、東京大学名誉教授)
設立 : 1999年7月15日
事業内容: (1)数学に関する技能検定の実施、技能度の顕彰及びその証明書の発行
(2)ビジネスにおける数学の検定及び研修等の実施
(3)数学に関する出版物の刊行及び情報の提供
(4)数学の普及啓発に関する事業
(5)数学や学習数学に関する学術研究
(6)その他この法人の目的を達成するために必要な事業
URL : https://www.su-gaku.net/
※「数検」「数検/数学検定」「数検/Suken」は当協会に専用使用権が認められています。
※「ビジネス数学検定」は当協会の登録商標です。
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