先生の教え方と子どもの学び方が変わるCLIL授業
~英語だけでなく小学校の授業が変わる、5つのポイント~
ヨーロッパ生まれの教育アプローチ「CLIL」(内容言語統合型学習)は、日本の高校や大学をはじめ、最近は小中学校でも実践が広がっています。しかし、例えば「理科の授業内容を英語で教える/学ぶ」と聞いて、教える側も学ぶ側も、「なんだか難しそう」というイメージをもつ人は多いのではないでしょうか。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>では、日本CLIL教育学会副会長を務める柏木 賀津子教授(大阪教育大学)への取材に基づき、日本でCLIL授業を行う意義、CLILにおける子どもの学び方について考察します。
先生にとってのCLIL【1】:授業力の高い先生の心をつかむ
「日本の先生は日本の教育があまりうまくいっていないと思い込んでいる傾向がありますがそんなことはありません」。
その点、英語が苦手でも、日本では授業を工夫する授業力の高い担任の先生が多く、そうした先生に、関心を持ってもらえるのがCLILの授業でもあると言います。「興味をもった人がCLIL授業を始めてくれている、という日本の状況は良いのではないかと思います」
先生にとってのCLIL【2】:授業力を高めて意識を変える
CLILは先生の授業力を育てると柏木教授。ただ新しい用語に抵抗のある先生もいるため、いきなり「CLILをやりましょう」と提案するのではなく、「英語を使って良い授業をしましょう」と伝え、必要な段階がきたらCLILの考え方を話すようにしているそうです。こうしてCLILを導入すると、先生たちの考え方も変化。CLILがCatalyst(媒介)になって、先生たちの力を育て、英語を社会と結びつけられるようになり、例えば、貧しい子どもたちがいる一方で、たくさんの食べものが捨てられている、という食品ロスに目を向けられるようにもなります。
またCLILでは自分とは全然違う得意分野をもつ人と協力するとシナジー(相乗効果)が生まれると言われています。interdisciplinary approach(学際的アプローチ)と呼ばれるもので、異分野の先生同士が授業をつくると多面的になり、個々に得意分野が違う生徒にとっても良い授業になると考えられます。
子どもにとってのCLIL【1】:「考える」授業で目が輝く
CLIL授業では子どもたちが英語で聞いたことに対し、思考を巡らせ、つぶやくようなときに、子どもたちの「目が輝く」と言います。例えば、「もったいないは地球を救う」という授業では、「もったいない」という言葉を世界に広めたWangari Maathaiさんの話を聞いた子どもたちが、「Can you recycle〜?(〜は再生利用できる?)」「 Yes!(できる!)」というやりとりをしながら、お箸をリサイクルして何を作れるかということを考えます。
そういうときに日本語でつぶやいたり、「これは、あかんのちゃう?」というようなやりとりを友だちと日本語でしたりていると、思考が働いていると言います。
「CLILでは、今日ターゲットにしたいところはがんばって英語でやるけれども、活動に入る前の指示や子どもが考えていることをつぶやくときは日本語でもいいんです」
子どもにとってのCLIL【2】:さまざまな子どもが学びやすい
柏木教授は暗記が得意で聞いたことはすぐ理解できる、という人は全体の20~30%くらいおり、そうした人たちが先生になる傾向があるため、暗記が苦手な子どもたちを理解しにくいと指摘。「暗記が苦手でもクリエイティビティの高い子どもはたくさんいるんです。暗記よりも何か創造しているときのほうが好き。そういう子たちを抑え込んでしまうともったいないと思います」
暗記が得意な子、苦手な子など様々な子どもがいる中で、インプットややりとりの中からことばの使い方や法則を見つける「Usage-Based Model」のような指導方法を取り入れるといいと言います。
子どもにとってのCLIL【3】:学力も高まる
CLIL授業は、学びの質だけではなく学力にも影響すると柏木教授。
「家庭のSES(社会経済的地位)は子どもの勉強の成果に影響を与えてしまう、と言われていますが、家庭の教育力というより、学級で学び合うなかで学校が子どもを育てるのがCLILです」
たくさんある星の写真を一つ一つ見ながら、どこに行きたいかを複合的に考える。そのときに心の中から出たI want to go to~ということばは、英語が苦手な子どもたちも記憶に入ってくる、ということがあると言います。
「CLILをまだ趣味的なものと思っていらっしゃる英語の先生や『まだ手が出せない』とおっしゃる先生もいると思います。でも、英語を使って次の世代を育てていく、というふうに思い、そういう学び方を経験させることができるような社会になってもらいたい」と柏木教授は言います。
「教え方」と「学び方」を変えるCLIL
CLIL授業では、教え方や学び方が変わります。学校教育の課題は、英語だけではなく、理数系、情報通信、国際的な問題に対する意識や解決力、アクティブ・ラーニング、教科横断型学習、と実に多岐に渡ります。
CLIL授業では、英語教育とこれらを別物としてバラバラに取り組むのではなく、統合的に教えることができます。そして、新しい情報に出会ったとき、教科の壁を超えて、すでにもっているさまざまな知識を活用しながら理解する。その過程で法則やパターンを見つけたり、新たな知識を得たりする。それらを繰り返しながら、新しい問題を解決する手順や方法がわかっていく。このような学びを経験することは、英語学習において有効なだけではなく、子どもたちが将来さまざまな課題に直面したときにも役立つのです。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■「教え方」と「学び方」が変わるCLIL授業 ~日本の良さを活かして次世代の人材を育てる~
前編
後編
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
- カテゴリ:
- 調査・報告
- ジャンル:
- 教育 子育て・保育 その他ライフスタイル
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