「マスクドライアイ」可視化実験動画を公開 ―マスクから漏れ出る呼気によるドライアイへの影響を解説―
角膜(黒目部分)の傷リスクとケア方法について啓発を行う「現代人の角膜ケア研究室」は、角膜の傷につながる可能性のある「マスクドライアイ」の可視化実験を行い、その様子をまとめた動画を2月18日(金)WEBサイト内にて( https://www.kakumaku-lab.jp/cause/mask-dryeye.htm#movie )公開しました。
1. 「マスクドライアイ」と角膜の傷
「マスクドライアイ」とは、マスク着用時に上部から呼気が漏れ、目にかかることで涙が蒸発し、目の乾燥につながることを言います。ウィズコロナの時代において、マスクが手放せない今、私たちは断続的にドライアイになりやすい状態にあります。また、ドライアイの状態では、涙が不足し、角膜がむき出しになり、傷がついてしまう可能性があります。角膜に傷がつくと、疲れや乾き感、ゴロゴロするなど、様々な不快症状につながるため注意が必要です。
2. 堀 裕一先生監修「マスクドライアイ」可視化実験を実施
長期化するマスク生活によりドライアイ症状がでる、または悪化するといった事例が日本国内ならびに海外でも報告されています。国内でも「マスクドライアイ」の研究が進められており、先日行われた角膜カンファランス2022(22年2月)において、この研究の第一人者である東邦大学医療センター 大森病院眼科の堀 裕一先生のグループから報告がありました。
このようにマスクとドライアイの関係が注目されている状況を受け、当研究室では堀 裕一先生監修のもと実験を行いました。その結果、呼吸に伴ってマスク上部から呼気が漏れ、それが目にかかっている様子が確認できました。このことから、マスク生活が当たり前となっている今、ドライアイのリスクが高まっていると示唆され、私たちは今まで以上に角膜を意識したアイケアをしていく必要があると言えます。
3. 公開動画「マスクでドライアイになりやすい?『マスクドライアイ』可視化実験」
https://www.kakumaku-lab.jp/cause/mask-dryeye.htm#movie
微粒子可視化システムにて、一般的な不織布マスクを着用し、呼気の流れを可視化。マスク未着用時は呼気が口からそのまま流れ出ていきます。マスクを着用すると上部のすき間から呼気が漏れ、肌を伝って目にかかることが確認できました。
※当実験はマスクの性能を調査した実験ではありません。あくまで「マスクドライアイ」の実態を調査したものです。
4. ドライアイが角膜にもたらす影響とケア方法について
<監修者:堀 裕一先生コメント>
実験動画から、マスクと鼻のすき間から呼気が目の表面に当たっていることがわかります。私たちが行った「マスク装用が眼表面に与える影響についての検討」に関する研究では、マスク着用時は未着用時に比べて涙液層破壊時間(BUT)[※1]が短くなることが分かっています。[※2]つまり、マスク着用時に漏れ出る呼気が目にかかると、涙が乾きやすくなるということです。マスク生活が定着した現代は、ドライアイのリスクが高まっていると言えます。さらに目や涙が乾燥するだけでなく、角膜の傷にもつながる可能性があるため、注意が必要です。
このように長時間のマスク着用により慢性的にドライアイのリスクが高まっている今、私たちは目を守るためにより一層アイケアが重要となっています。
さらに、PCやスマートフォンを見る時間の増加により目を酷使していることや、自律神経の乱れから涙の量と質が低下していることなど、コロナ禍において私たちの目は日々危険な状態に晒されていると言えるでしょう。そこでドライアイ予防策として、おすすめしたいセルフケアの方法をご紹介します。
[※1]涙液層破壊時間(BUT):ドライアイ診断をする際の指標の一つ。目を開けたまま瞬きをしない状態で、涙の層が壊れるまでに要する時間のことを指す。
[※2]出典:「マスク装用が眼表面に与える影響についての検討」糸川 貴之、岡島 行伸、岩下 紘子、鈴木 崇、堀 裕一より、角膜カンファランス2022にて発表。
<おすすめのアイケア方法>
(1)意識的にまばたきを増やす
パソコン作業などに集中すると、通常自然に行っているまばたきの回数が減ってしまいがちです。意識的にまばたきをすることで涙の蒸発を防ぎましょう。
(2)パソコンで作業するときは少し視線を下げる
上を向くとまぶたが開いて、より目が乾きやすくなってしまうため、モニターは少し見下ろす位置に置きましょう。
(3)作業の合間に目をしっかり休める
1時間の作業につき5~15分程度の休憩が望ましいです。少し遠くを見ることや、可能ならば目を温めるのも効果的です。
(4)点眼薬で目を潤す
目をいたわり、角膜のケアをするためにも用法用量を守って適切に使うことが大切です。点眼薬を差し過ぎると、逆に涙の膜が壊れ、質が低下し、角膜が傷つきやすくなってしまうため、1日5回~6回前後を限度とすることがおすすめです。
<監修者プロフィール>
堀 裕一先生 東邦大学医療センター 大森病院眼科 教授 診療部長
角膜疾患やドライアイ、角膜移植、オキュラーサーフェス(角結膜上皮と涙液)を専門に研究を行う。1995年大阪大学医学部卒業、大阪大学医学部眼科学教室入局。2001年米国ハーバード大スケペンス眼研究所研究員。06年大阪大学医学部眼科助手(助教)、09年東邦大学医療センター佐倉病院眼科講師、11年東邦大学医療センター佐倉病院眼科准教授、14年東邦大学医療センター大森病院眼科教授。現在に至る。
<実験概要>
■実施日 :2022年1月18日(火)
■実施場所:新日本空調株式会社 東京本社 クリーンルーム
■実施概要:マスク着用時に漏れ出る呼気の流れを可視化。
※一般的な不織布マスクを着用
■被験者 :20代女性1名、20代男性1名、30代男性1名 計3名
■実施主体:現代人の角膜ケア研究室
■実験協力:新日本空調株式会社(微粒子可視化システムを使用)
■実験監修:東邦大学医療センター 大森病院眼科 教授 診療部長/堀 裕一先生
「現代人の角膜ケア研究室」(URL: https://www.kakumaku-lab.jp/ )では、近年増加していると言われている「角膜上皮障害(角膜に傷がついた状態 等)」から現代人の目を守るため、専門家による正しい角膜のセルフケア方法など、角膜に関する情報を分かりやすく、紹介しています。
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