「身近なところに京セラの技術」シリーズ 自動車のヘッドアップディスプレイ、G-SHOCKに採用実績を持つ 京セラの高精細で、視認性の高い液晶ディスプレイ
液晶ディスプレイは、コピー機やスマートウオッチなど、私たちの身の回りで幅広く使用されており、近年では情報通信機器の発展や自動車の高度情報化に伴い、高精細でかつ、超低消費電力であることが求められています。
京セラは、自動車関連やオフィス機器、計測器などの産業機器関連において、さまざまな特性や幅広い用途を求められる液晶ディスプレイを40年以上にわたり、開発・製造してきました。
■京セラ製液晶ディスプレイの詳細: https://www.kyocera.co.jp/prdct/display/
■京セラ製液晶ディスプレイの特長
(1)高透過率、高コントラストの実現
車のフロントガラスに投影し、スピードやアラームなどを表示するヘッドアップディスプレイにおいて、自社LTPS※ラインで培った高精細・高集積化技術により、高透過率、高コントラストを実現しています。くっきり、鮮やかな表示を得られるとともに、省電力化、発熱量低減も図ることができます。
※LTPSとは、Low-temperature Poly Siliconの略で、低温ポリシリコンを指す。この低温ポリシリコンにより、トランジスタを小さくすることができるため、解像度を高くすることができる。また、ディスプレイ外のフレームに配置するトランジスタも小さくなるため製品をより自由にデザインできる
(2)屋外視認性
京セラは、屋外視認性と低消費電力を兼ね備えたMIP液晶ディスプレイも製造しています。MIP液晶ディスプレイとは、画面を構成する「画素」の中にメモリを持ったディスプレイです。
時計など屋外で使用する機器の場合、表示が暗くなったり、日差しの角度により二重に見えたりするなど、画面が見えづらくなることがあります。当社のMIP液晶ディスプレイは、太陽光などの外光を反射して利用するので、バックライトがなくても表示が可能な「反射型液晶ディスプレイ」と、反射層を内面に形成することで一般的な反射型液晶ディスプレイに発生する二重表示が起きない「内面反射層」という二つの特長があります。これらの技術により、屋外での視認性の良さを実現しています。
(左)MIP液晶ディスプレイ(右)透過型液晶ディスプレイ
※撮影した写真に対して角度補正を行っています。
(3)低消費電力
京セラのMIP液晶ディスプレイは、一般的な液晶ディスプレイと比べて1画素あたりの消費電力を約1/1000まで低減できます。これは、反射型液晶ディスプレイを使用することで、バックライトが不要となり、消費電力を抑えられるためです。
さらに、京セラの特許技術である「画素選択方式」という特長も省電力化に貢献しています。表示画面を変更する場合、一般的な液晶は画素全ての書き換えを行う必要がありますが、この画素選択方式では、画素を個々に書き換えられるため、消費電力を抑えることが可能です。
タイプ | MIP | 一般的なTFT液晶 |
画面サイズ [Inch] | 1.81" | 1.8" |
解像度 [dot] | 256×256 | 480×(RGB)×240 |
電源電圧 [V] | 3.3 | 3.3 |
消費電力Typ.[mW] | 0.01 | 52.8 |
条件 | 固定画面表示、バックライトOFF時 | 固定画面表示、バックライトOFF時 |
当社液晶ディスプレイ比
<身近なところで使われている事例1:自動車用製品>
自動車は、一般的に激しい温度変化や振動・衝撃が加わり続ける過酷な環境下で使用されるため、搭載される液晶ディスプレイには、視認性の良さ以外にも高度な信頼性と耐環境性が求められます。
京セラの液晶ディスプレイは、当時としては高い視認性と自動車用途に求められる高耐久性が評価され、1982年3月に世界で初めて※自動車のインストルメントパネルに採用。現在も国内外を問わず、数多くの自動車に搭載されています。
※京セラ調べ(2023年10月)
車載用液晶ディスプレイ搭載事例・製品の特長
近年では、自動車の高度情報化により、ヘッドアップディスプレイ(HUD)用の液晶ディスプレイの需要が高まっております。HUDとは、自動車のフロントガラスにスピードメーターやアラームなどを表示し、安全運転支援に貢献するものです。
京セラでは、当社のLTPS技術により世界的にも最高レベルの高透過率を実現しており、さまざまな条件下でも、くっきり、鮮やかな表示を得られるとともに、省電力化、発熱量低減も図ることができます。
<身近なところで使われている事例2:カシオ製腕時計のG-SHOCKシリーズ>
当社のMIP液晶ディスプレイが搭載されている代表的な製品の一つが、カシオ計算機株式会社(以下、カシオ)の耐衝撃腕時計G-SHOCK 「DW-H5600」です。
G-SHOCKは1983年に誕生した耐衝撃性の腕時計で、今回の「DW-H5600」は心拍計測機能を搭載し、ランニングやトレーニングなど屋内外でのスポーツシーンで便利な製品となっています。
G-SHOCK「DW-H5600」
このような屋外で使用する時計などでは、太陽光下での視認性や低消費電力が求められます。一般的な液晶ディスプレイでは、画像を表示するために、常にデータを通信し続ける必要がありますが、画面を構成する「画素」の中にメモリを持つMIP液晶ディスプレイは、データをメモリ内に保持することができます。これにより、データを通信し続けなくても表示することが可能なので、電池が長持ちします。
これらの特長から、アウトドアのシーンで人気なG-SHOCKにも採用いただいています。
■本製品に関わる京セラの社員から
低消費電力、小型化など、さまざまな要望を満たすMIP液晶ディスプレイの開発
私は、腕時計などに搭載されるMIP液晶ディスプレイの開発を行っています。腕時計に搭載されるMIP液晶ディスプレイは、腕時計の電池寿命に直結する低消費電力と、それぞれの製品の大きさに合わせた繊細な加工が求められます。
まずは低消費電力化を目指すために、試作や評価を繰り返し、特許も取得した京セラ独自の「画像選択方式」を開発しました。さらに、それぞれの腕時計の小さな筐体(きょうたい)に合わせた異形加工※についても新たな加工設備を導入し、お客様の要望に正確かつ迅速に対応できるようにしました。これらの技術を活用し、お客様の製品に合わせた要求にお応えできるカスタム対応力が京セラの強みだと考えています。
最近では携帯型の医療器や計測器などでも採用いただいており、引き続きさまざまな分野で貢献できるよう、製品ラインアップの拡充や改善をしてまいりたいと思います。
※丸形状ではない楕円(だえん)形や八角形などに加工すること。
京セラ製だから美しい、と言われるような液晶ディスプレイを提供していくために
私は腕時計用のMIP液晶ディスプレイの営業を担当しています。既存顧客の要望にお応えするだけでなく、腕時計以外のハンディ製品にも採用していただけるよう新規の市場開拓に励んでいます。
今では京セラ製MIP液晶ディスプレイの代表的な特長の一つとなっている低消費電力ですが、2013年にG-SHOCK用のモノクロTFTディスプレイとして超低消費電力の要望をいただいたことが始まりでした。当時、京セラでは産業用LCDの標準品販売が主体であり、民生品向け、かつ腕時計用のLCDのラインアップが存在しない状況でした。そのような中、超低消費電力を実現するため、何もないところからモノクロMIP原理試作の開発をスタートし、試行錯誤を重ねました。その結果、京セラ製モノクロMIPの超低消費電力の特長が認められ、2018年に最初のMIP製品を量産提供することができました。
今回の開発で得た知見を生かし、モノクロ液晶ディスプレイは、京セラ製MIPだから表示が美しく、電池が長持ちする、と言われるような製品を提供していきたいと考えます。そのために、お客様の要望を正確に把握し、社内の技術部門と連携しながら、より良い製品を提供できるよう努めていきます。
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