デジタルツイン・アプリ 「GeOrchestra(R)(ジオケストラ)」の開発と現場適用による実証
- 地盤中の施工情報をAI評価し、可視化・共有化を実現 -
安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)と日特建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:和田 康夫)は共同で、地質評価AIとCIM(Construction Information Modeling)を実装したデジタルツイン・アプリケーション「GeOrchestra(R)(ジオケストラ)」を開発しました。
本アプリケーションは、地盤を削孔・掘削する際に得られるさまざまな逐次施工情報(注1)から不可視領域における地質分類を推論するAIと設計CIMを統合し、WEB上の3次元空間で地質分類や施工情報を更新・可視化します。
具体的には、削孔に応じて排出されるスライムからAIが地質を解析評価し、解析評価した削孔位置の地質区分を現場全体のCIMモデル内に3次元データとして反映することにより、地中の不可視地質構造を関係者間で共有することができます(図1)。専門技術者と同程度の精度で評価された地質分類や逐次施工情報を360°自由な視点で複数のユーザーが同時に共有することで、「精度の高い予見や気付き・リスク回避による確実な施工」と「コミュニケーション支援ツールとしての施工性向上」を目指します。
1. 特長
本アプリケーションの特長は以下のとおりです。
(1) 削孔スライムに対するAIによる解析から地質評価、評価結果による3次元モデルの作成、モデリング情報の逐次更新までの一連の作業はクラウド上で全て自動化されています(図2)。
(2) 新規のスライム情報がクラウドにアップロードされると自動的に新規データを検知し、AIによる解析評価はわずか数秒程度で完了します。
(3) 3次元モデルの空間情報は、ユーザーが任意に設定した時間間隔で自動的に更新されます。
(4) (3)と同様に、地盤の削孔機械情報(注2)も施工進捗に応じて自動的に反映されます。
(5) ネットワーク環境が構築可能な現場であれば、現場単位で設定したユーザーアカウントとパスワードを関係者間で共有し、指定のURLへアクセスするだけで、ユーザー毎の操作干渉も発生せず、360°任意の視点でどこでも施工情報を確認できます。パソコンやタブレット、スマートフォン等のさまざまなIoTデバイスで利用することが可能です。
2. 現場実証
グラウンドアンカーによる地すべり対策を目的とした国土交通省近畿地方整備局発注の「高原トンネル上部斜面対策工事」において、GeOrchestra(R)を適用しました。
本工事は、国道169号高原トンネル内に亀裂を発生させた地すべりに対して斜面を安定化する工事です。深い地すべり面に対して、グラウンドアンカー(最長80m・計798本)をトンネル交通に影響を与えずに施工するものであり、グラウンドアンカーの長さと本数において比類ない工事です。
長尺施工では、削孔時の孔曲がりの抑制管理が重要となります。試験施工(2本・削孔延長各約80m)によって、孔曲がりが地質毎の遷移領域で発生する傾向が強く認められたことから、地質評価の集約情報からの施工支援を目的として、本アプリケーションの適用に至りました(図3)。
結果、以下のような効果が確認されました。
(1) 先行施工の地質評価結果をCIMにより3次元で視覚化することにより、孔曲がりが発生する遷移領域が確実に予見できたため、事前の施工方法の見直しや丁寧な削孔等を促すことで、孔曲がりのリスク回避につながりました。
(2) 不可視の施工地盤内の地質を専門技術者と同程度の精度で評価が可能となり、現場判断の効率化につながりました。
(3) PC・タブレット・スマートフォンなど、さまざまなIoT端末から簡単かつ同時にアクセスすることができたため、関係者間の精度の高いコミュニケーション(最新情報に基づく進捗管理・施工計画等)を醸成できました。
3. 今後の展開
GeOrchestra(R)が保有するAI・デジタルツイン・IoT連携・自動化機能は、今回現場適用したグラウンドアンカーの工種だけでなく、杭工事や地盤改良工事、トンネルの先行ボーリングなど、削孔・掘削を伴う不可視地盤に対する事前の施工管理への活用・展開が期待できます。
当社は引き続き、現場施工へのDXの活用・展開によって、省力化・生産性・施工品質の確実性等の向上につながる取り組みを推し進めていきます。
(注1)逐次施工情報
排出スライム・施工速度・回転トルク・給進力等
(注2)削孔機械情報
削孔速度、トルク、給進力、送水圧等
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