BSI(英国規格協会)、世界9カ国のビジネスリーダーを対象とし 「AIが仕事に与える影響」に関する調査結果を公開
調査回答者の4分の3がAIによる配置転換が起きると予想する一方、 大半は既存の業務を守ることよりもイノベーションの推進が重要であると回答
業務改善と規格開発を推進する英国規格協会(The British Standards Institution、以下「BSI」)は世界9カ国(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、オランダ、英国、米国)のビジネスリーダー932人を対象に行ったAI成熟度に関する調査結果をもとに、AIが仕事に与える影響について考察したレポート、『共に進化する:AI人材の活躍(Evolving Together: Flourishing in the AI Workforce)』を発表しました。
調査では、世界のビジネスリーダーのほぼ10人に9人(89%)が、AIによって一部のオフィス業務が変化すると予想しており、4分の3以上(77%)はそのような業務がAIに代替されると予想していることが明らかになりました。この背景には、AIツールが生産性にポジティブな影響を与えるという楽観的な見方の広がりや、76%の企業がAIへの取り組み不足が競争上のデメリットになると認識していることがあります。
本レポートによると、72%がAIツールの導入によっていくつかの業務が変化または消滅するとしても、AIを前向きに活用すべきであると回答し、約3分の2(65%)は、イノベーションが既存の業務を守ることよりも重要であると回答しています。注目すべきは、BSIが調査したビジネスリーダーの多くがAIをリスクよりも機会と捉える傾向が強く、73%が同じ考えを持っていることです。一方で日本のビジネスリーダーの38%、フランスの35%、イギリスの34%は異なる見解を示し、AIは個々の従業員にとって機会よりもリスクの方が大きいと述べています。
世界全体では回答者の半数以上(55%)が、今後5年以内に生産性と効率性を向上させるためにAIが利用されることを予想しており、日本では53%、中国では64%、インドでは65%がそのように回答しています。また、4分の1がAIによって外部委託への依存度が下がると予想する一方で、84%はAIの変革、トレーニング、イノベーションにおける専門業務が創出されると期待を寄せています。これは特にインドで95%、中国で92%に上りました。しかし日本では77%にとどまりました。
BSIのヒューマン&ソーシャルサステナビリティ グローバル責任者である、Kate Fieldは次のように述べています。「労働環境は変化しており、人口動態や年齢の多様化が進むとともに、いつ、どこで、どのように仕事をするかについての新たな姿勢や期待が生まれています。AIを活用したテクノロジーは、あらゆる分野や市場において、働き方を変化させる力を持っており、企業の人材採用、業績管理、社員教育などの方法を形作るものだと期待することができます。
AIを効果的に活用することで、多様性を強化し、ライン管理を変革し、より柔軟な働き方を促進する可能性があります。同時に、人間の創造性、独創性、批判的思考、協調性をいかに維持するかを検討することが不可欠です。AIを使って効率性と生産性を向上させ、人間の洞察力、共感力、思いやりと組み合わせることで、組織文化を強化し、より大きなイノベーションを促進することができます。」
人間の手作業による業務もAIによって変化すると考えられており、ほぼ4分の3(72%)が、AIとロボット工学の組み合わせによって、一部の業務が代替される可能性があると予想しています。しかし、72%は、AI活用の結果として一部の仕事が変化したり消滅したりするとしても、AIツールは受け入れるべきだと回答しています。ただし、この割合は国によって大きく異なり、オーストラリアでは78%が賛成しているのに対し、日本での賛成は69%にとどまりました。世界全体では、65%が既存の仕事を保護するよりもイノベーションが重要だと回答しており、この数字は中国では88%に上ります。
本レポートでは、経営、職務再設計、トレーニング、採用におけるAIの活用の見通しについて調査しました。世界全体で3分の2(67%)が、候補者の採用プロセスをサポートするためにAIツールを使用していると回答しており、さらに高い割合で、パフォーマンス管理のあらゆる側面をサポートするためにAIを使用していることが明らかになりました。しかし、人事部門がAIの影響を最も受けると予想すると回答したのはわずか39%で、人事部門がAIの影響を受けるとあまり考えられていないことが明らかになりました。一方、他部門ではオペレーション部門が56%、マーケティング部門が54%、営業部門が45%でした。また、今後5年間にAIに投資すると回答したのは約10人に9人(91%)に上りました。
AI活用におけるトレーニングの重要性が指摘されており、4分の3(74%)が「AIツールを管理するスキルがなければ、キャリアアップに悪影響を及ぼす」と回答していますが、日本では49%と減少しています。リバースメンタリングの役割が強調されており、85%がAIを使用した経験のあるメンバーが経験の浅い同僚をサポートするシステムを支持しています。全体として4分の3(76%)の企業が何らかのトレーニングを提供していますが、AIツールを安全で倫理的、効果的に使用する方法やリスク管理について従業員に指導するために専門家による公式または社内リソースなどの専門家以外による非公式のトレーニングを提供していることを認識している企業は3分の1にとどまっています。にもかかわらず、78%のリーダーは、従業員のAIに対する信頼を高めるために、企業はもっと努力すべきだと回答しています。包括的なトレーニングの提供では中国(94%)とインド(90%)がリードしていますが、日本(52%)と英国(59%)は遅れています。英国では、17%の企業がAIに関するトレーニングを全く提供していないことが明らかになりました。
現在、取締役会レベルの優先事項としてAIの導入を行っている企業は全体の30%にとどまっています。CAIO(最高AI責任者)またはそれに相当する役職を設けている企業はわずか17%にとどまり、24%の企業ではAIに関する公式の戦略が存在していないことが明らかになりました。しかし、企業がリーダーシップを発揮する機会は明確にあり、約5人に4人(78%)が、従業員の間でAIに対する信頼を築くために企業はもっと努力すべきだと回答しています。また81%が、AIを導入することで得られる利益を社会全体で共有できるようにする責任が企業にはあると回答しています。
本調査では、AIが社会に利益をもたらす力として認識されるよう、ビジネスリーダーがAIに対する信頼を築くために自社のエコシステムと社会全体でどのような行動をとるべきかを探り、重要なポイントをまとめています。内容は以下の通りです。
・パフォーマンス管理におけるAI:AIを活用してパフォーマンス管理を強化し、人間の洞察力、感情的知性、批判的思考と組み合わせながら組織文化を高める。
・多様性、インクルージョン、採用:AIを活用してより多様な人材を確保する一方で、組織の持つ文化も変化に対応して発展していくようにする。
・仕事のデザイン:柔軟性を高め、生産性を向上させるために、AIがどのように仕事の再設計を支援できるかを検討する。
・トレーニング:継続的なAIトレーニングの実施を優先する一方で、それだけでは能力を保証できないことを認識する。
・コーポレート・ガバナンスと信頼:AI活用のあらゆる段階で従業員を巻き込み、信頼を築く。
■報道関係者の皆様へ
レポートの詳細はこちらをご確認ください。
■調査方法
9つの市場(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、オランダ、英国、米国)、7つのセクターにおいて、さまざまな規模の企業のビジネスリーダー(マネージャークラス以上)932人に、投資やコミュニケーションなどさまざまなテーマでAIに関連する20の質問を行いました。
本調査は2024年3月にYonder Consultingが実施し、モデルの開発・制作はBursonによって実施されました。
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、ビジネス改善と標準化を推進する機関です。設立以来1世紀以上にわたって組織や社会にポジティブな影響をもたらし、信頼を築き、人々の暮らしを向上させてきました。現在190を超える国と地域、そして80,000社以上のお客様と取引をしながら、専門家、業界団体、消費者団体、組織、政府機関を含む15,000の強力なグローバルコミュニティと連携しています。BSIは、自動車、航空宇宙、建築環境、食品、小売、医療などの主要産業分野にわたる豊富な専門知識を活用し、お客様のパーパス達成を支援することを自社のパーパスと定めています。気候変動からデジタルトランスフォーメーションにおける信頼の構築まで、あらゆる重要社会課題に取り組むために、BSIはさまざまな組織と手を取り合うことによって、より良い社会と持続可能な世界の実現を加速し、組織が自信を持って成長できるよう支援しています。
BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよび研修サービスの提供を主業務とし、また規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。
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