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ベイン・アンド・カンパニー、 Global Private Equity Report 2025を発表  取引の再活性化により、プライベートエクイティ市場が復調

企業動向
2025年3月7日 11:00
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ベイン・アンド・カンパニー(以下 ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は、『Global Private Equity Report 2025( https://www.bain.com/insights/topics/global-private-equity-report/ )』を発行しました。



■本レポートのポイント

・2024年はバイアウト投資、エグジットともに顕著に回復したものの、資金調達の低迷は、変化し続けるマクロ経済や地政学的混乱の影響による逆風を浮き彫りにしている。

・ファンドはこれまでの回復局面とは異なる課題である市場平均を上回るリターンを生み出すためのコストの増加、激化する競争、手数料引き下げへの圧力等に対応するために、これまでとは異なる形で価値創造を目指し、差別化戦略を進化させる必要がある。



■プライベートエクイティ(PE)市場は回復基調 - 取引の再活性化が進む

昨年のPE市場は、投資、エグジットともに回復し、市場に再び活気が戻ってきている明確な兆候が見られました。これは、過去2年間にわたる急激な低迷を覆すものであり、リーマン・ショック以来、業界が直面した最も厳しい局面からの脱却を示しています。

ジェネラル・パートナー(GP)によるディール成立意欲の高まりや長期間温存されていたドライパウダー(未投資資金)の活用ニーズに加え、各国の中央銀行が政策金利を引き下げたことによる経済環境の改善が追い風となり、2024年のバイアウト投資総額は前年比37%増の6,020億ドル(アドオン投資を除く)に達しました。同時に、エグジット市場も大幅に回復しました。世界全体のエグジット総額は前年比34%増の4,680億ドルとなり、エグジット件数も前年比22%増の1,470件に達しています。これにより、リミテッド・パートナー(LP)への資本還流を妨げていた「エグジットの凍結状態」が徐々に解消される見込みで、GPが抱える未売却企業29,000社の滞留解消に向けた進展も期待されます。

投資とエグジットの回復が進み、取引市場は前向きな変化を見せていますが、ベインの最新分析では、2025年のPE市場の継続的な成長は、変動するマクロ経済環境をどのように乗り越えられるかにかかっていると指摘しています。

市場平均を上回るリターンを生み出すためのコストが急激に上昇している一方で、今まで以上に投資家からの手数料引き下げ圧力にさらされています。ベインの分析によると、リーマン・ショック以降、純管理手数料の平均は最大で半減しています。また、ディール獲得競争の激化によりバリュエーションのマルチプル(評価倍率)が高止まりしており、借入コストの上昇によりレバレッジを活用した価値創出が難しくなっています。さらに、差別化されたインサイトの創出や世界レベルの投資家対応の実現といった重要要件にかかるコストも増加しています。



■各地域で取引市場が堅調に成長し、非公開化ディールが市場の上位を占める

地域別の取引額の堅調な成長はヨーロッパが牽引し、取引件数が9%、取引額は54%増加しました。北米では取引件数が9%、取引額は34%増加しました。アジア太平洋地域は、取引件数がわずかに減少したものの取引額は11%増加し、この地域の多くの国で2桁の成長が見られました。しかし中国の成長鈍化と日本での取引額の減少によって全体の成長は相殺されています。中国は、2020年まではアジア太平洋地域の取引額の半分を占めていましたが、昨年は25%強に減少しました。上場企業の非公開化ディールは引き続きPE市場の上位を占め、昨年の世界全体の取引額は2,500億ドルに達しました。北米では、50億ドル超のディールの約半数を占める規模となっています。



■エグジット市場は2年間の低迷から回復するも、流動性の課題は依然として残る

昨年見られたエグジットの急増は、PE市場の活性化を示す明るい兆しであると同時に、投資家への資本還流を確保しLPの期待に応えるという業界にとっての喫緊の課題に対する一定の解決策となりました。2024年の世界全体のエグジット総額は前年比で34%増加し、件数も22%増の1,470件となりました。北米とヨーロッパではエグジット活動が活発に行われたものの、アジア太平洋地域では全体として横ばいとなり、中国での減少が他の地域の成長を相殺する結果となりました。エグジット市場の回復を牽引したのは、スポンサー間(PEファンド同士)の売却であり、前年比141%増の1,810億ドルに達しました。これは、1件あたりの取引額が48%増加したことによって後押しされたとベインは分析しています。一方、戦略的ディール(コーポレートバイヤーへの売却)は前年とほぼ横ばいであり、IPO市場は依然として低迷し、エグジット総額のわずか6%にとどまりました。



■資金調達は3年連続で減少し、資本獲得競争が激化

ベインの分析によると、エグジットの低迷がPE業界の資金循環を鈍らせ、それが資金調達の低調を招く主な要因となっています。2024年のプライベート・アセット全体の資金調達額は3年連続で減少し、前年比24%減少し、2021年の過去最高額である1.8兆ドルと比較すると40%の減少となりました。



■市場環境の変化が回復の形を変える - PEに求められる戦略的課題

ベインは、資本とディール獲得競争の激化が、今後数年間でPE業界の競争環境を大きく変える要因となると指摘しています。これにより、PEファンドはより明確な戦略と高い規律を持つことが不可欠になっています。

PE業界が直面する主要な変化として、本レポートでは以下の点を挙げています。


・手数料引き下げへの圧力の高まりによるマージン圧縮(手数料ゼロの共同投資の増加が影響)

・コスト増加と業務複雑化

・資本調達競争の激化と、一部のファンドに資金が集中する「持つ者と持たざる者のゲーム」構造へのシフト

・ファンド規模の重要性の高まり


ベインは、ソブリン・ウェルス・ファンドやプライベート・ウェルスからの新たな資本を活用しようとするGPに対して、従来とは異なる要件が求められるようになっていることを指摘しています。今後10年間でオルタナティブ資産の運用残高の成長の約60%が、これらの新たな資本源からの資金流入によってもたらされると推計しています。さらに、ファンドの「規模」がこれまで以上に重視されるようになり、大型ファンドは明確な競争上の優位性を獲得していると分析しています。今後、オルタナティブ投資業界ではM&Aがこれまで以上に重要な役割を果たすことが見込まれ、実際に2021年以降、業界内で180件のM&Aが実施されています。



■PE業界におけるAI競争が本格化 - 主要ファームは積極的に投資し、実用化を推進

PEファームは、生成AIを活用してポートフォリオ企業の戦略的価値を高める取り組みを加速させています。ベインの調査によると、PEファームのポートフォリオ企業の大半がAIを試験運用・開発しており、約20%の企業がすでに生成AIを活用し、具体的な成果を上げていることが明らかになりました。



■カーブアウトディールのパフォーマンスは低下するも、上位ディールは依然として高リターンを維持

ベインは、企業のカーブアウトディールのパフォーマンスが低下しているという課題についても分析しています。

2012年まで、カーブアウトディールの平均投資倍率(MOIC)は約3.0倍で、バイアウトの平均1.8倍を大きく上回っていましたが、その後1.5倍に低下しました。

しかし、上位25%のカーブアウトディールでは2.5倍のMOICを維持しており、依然として高いリターンを実現しています。ベインは、成功するカーブアウトディールの共通点として、事業の核となる価値創造の戦略を明確にし、新会社がそれを実現できるよう設計されていることが重要であると結論付けています。成功するカーブアウトには、デューデリジェンスの段階で価値創造計画を策定し、それに沿った分離計画、人材戦略、そしてカーブアウト完了後の価値創造を確実に実行するための実行計画を準備することが不可欠であるとベインは指摘しています。



■ベイン・アンド・カンパニーについて

ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。


商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド

所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階

URL   : https://www.bain.co.jp