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【岡山理科大学】工学部の岩野耕治准教授らの研究が文部科学大臣表彰・科学技術賞受賞

台風強度の予測精度向上、温暖化予測の高精度化にも寄与

調査・報告
2025年4月17日 10:30
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科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞を受賞した岩野准教授
科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞を受賞した岩野准教授
 岡山理科大学工学部機械システム工学科の岩野耕治准教授らの研究グループが4月15日、令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)を受賞しました。台風の強度に直結する大気と海面の間の運動量(摩擦)および熱の輸送量に加え、地球温暖化に関係するCO₂の輸送量についても高精度な測定を可能とし、これらの輸送量と風速、風波形状などとの関係を初めて高精度にモデル化することに成功しました。

 研究タイトルは「台風下の大気海洋間での運動量と熱とCO2の輸送機構の研究」。岩野准教授と兵庫県立大学大学院工学研究科の高垣直尚教授、京都大学の小森悟名誉教授とによる共同研究です。

 岩野准教授によれば、台風の被害の軽減対策を講じるためには、全球大気海洋結合気象モデルを用いた台風の進路と最大風速の正確な予測が必要となりますが、従来の研究では、この気象モデルに組み込まれた高風速下での大気と海洋間の運動量と熱の輸送モデルが曖昧でした。
 本研究では、台風に匹敵する高風速で空気を水面上に流すことにより、激しい砕波を伴う海表面を再現できる国内唯一の大型台風シミュレーション水槽(全長約23m、15㌧規模)を設計製作し、風速70m/sに相当する高風速下で激しく崩壊する風波気液界面を通しての気流側と液流側の間の運動量・熱・CO₂の輸送量の高精度測定を実施しました。

 本研究により、低風速域で単調増加していた運動量輸送係数が風速30m/sを超える高風速域で飽和状態の一定値をとり、逆に、低風速域で一定を保っていた熱輸送係数が高風速域で増加し、CO₂の輸送係数も急増するという風速30m/sを境に、現象が切り替わるレジームシフトが生じることを発見しました。
 本成果は、台風強度の予測精度の改善や大気海洋間のCO₂交換に及ぼす台風の影響の考察に役立つとともに、海水面の状況を変化させる人為的介入による台風の制御方法等の提案に繋がるものとして期待されます。
 
 受賞を受けて、岩野准教授は「このたび大変栄誉ある賞を賜り、身に余る光栄です。この賞は、大型実験水槽を用いた室内実験研究の成果に対して授与されたものです。このような大規模な室内実験は、準備から測定に至るまで多大な時間、労力、そして経費を要する地道で困難な研究であり、近年では必ずしも主流とは言えない傾向にある中で、本研究の意義と価値を認めていただけたことに、受賞者一同、心より感謝しています。ご協力いただいた関係者の皆様にも、心より御礼申し上げます。今後も本研究をさらに発展させるとともに、実験を通じて学生の育成に努めていきます」と話しています。
文部科学省で4月15日に行われた表彰式で、賞状を手に記念写真に納まる(左から)岩野准教授、高垣教授、小森名誉教授
文部科学省で4月15日に行われた表彰式で、賞状を手に記念写真に納まる(左から)岩野准教授、高垣教授、小森名誉教授