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中東のLPG輸出、3月に過去最高を記録

〜インドの需要減退が今後の逆風に〜

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2025年4月23日 16:00
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2025 年4月23日(日本語版)

中東地域(イランを除く)からのLPG輸出量は、Vortexaのデータによると2025年3月に日量149万バレル(mbd)と過去最高を記録し、前年同月比で約20万バレルの増加となりました。これは、OPECプラスが4月から原油減産を解除する動きに先立つものであり、UAE(前月比+13.2万バレル)と非OPEC加盟国であるカタール(同+6.2万バレル)が増加の主な要因でした。

以前の予測では、減産解除による地域のLPG供給量への影響は最小限であり、4月以降はVLGC(超大型ガス運搬船)1隻分の増加にとどまると見込まれていました。そのため、4月の輸出量が3月の記録を上回ることは困難と見られています。

輸出の勢いにブレーキがかかる主な要因とは

1つ目は、4月に入ってからの季節的な需要減退です。バイヤーとの対話によると、4月前半の需要は非常に低調でした。後半も大きな改善は見込めず、ラマダン明けで主要バイヤーが今週に入り、ようやく業務復帰するため、契約交渉に割ける時間が限られていることが影響しています。

2つ目として、サウジアラムコが4月のLPG供給プログラムにおいて2つの主要バイヤーに対して許容範囲を引き締めており、供給余力が減っていることも輸出減の要因です。

一方、UAEからの輸出増は、同国のAl-Hosnガスプラントの稼働率上昇によるものと見られています。カタールも極東市場でのシェア拡大を狙い、UAEとの競争を強めている可能性があると見られているようです。

インドのLPG補助金削減が需要に影響

中東にとって最大のLPG輸入国であるインドの動向が、今後の輸出に大きな影響を与える見込みです。Vortexaのデータによると、2025年第1四半期に中東からのLPG輸出のうち59%がインド向けであり、これは2024年の平均57%、2023年の52%から上昇しています。

また、インドのLPG需要は、2024年に前年同期比で日量98.6万バレル(+6.4%)増と大幅な伸びを見せました。これは2023年の伸び(+1.5%)を大きく上回る結果です。

しかし、同様の需要の伸びが2025年も続くとは考えにくい状況です。2024年の総選挙期間中に、政府は有権者に対して多くのLPG補助金や無償シリンダーの提供を行っていました。インドにおいては、LPGの92%が家庭用として消費されています。政府はまた、貧困層向けLPG補助制度「PMUY(プラダン・マンティリ・ウッジワラ・ヨジャナ)」の対象を、予定よりも数ヶ月前倒しで750万人分拡大させる目標を達成しました。

しかし、2025年4月から始まるインドの新年度予算では、以下のように補助金が削減されると見られています:

- 低所得世帯向け:360億ルピー(4億2,100万ドル)削減(28%減)
- 全世帯向け:260億ルピー(3億400万ドル)削減(18%減)

この補助金削減により、LPGの消費量の増加は抑制されると見られます。国営石油会社は国際価格を下回る価格でLPGを販売せざるを得ず、2024年度には約47億ドルの累積赤字を計上しました。

今後5年間、国政選挙の予定はなく、補助金の提供は各州政府に委ねられることになります。とはいえ、連邦政府のような広範な支援は期待できません。南部アンドラ・プラデーシュ州では、2024年11月から4ヶ月ごとに無償LPGシリンダーを提供する政策を導入する予定です。

なお、家庭用シリンダーの月間価格は2024年3月から据え置かれていますが、補助金削減に伴いこの価格が維持されるかは疑問です。

輸出の多様化が進む可能性

最終的には、中東地域が今後もインド向け輸出を重視する方針に変わりはないでしょうが、インドの需要成長が鈍化すれば、輸出先を北東アジアや東南アジアへと多様化させる動きが加速する可能性があります。

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