平成27年度 新生!ふくしまの恵み発信事業 第2回メディアツアーを実施 福島の「きのこ・きのこ原木」生産、復興へ向けた取組
― 県内有数のしいたけ、きのこ原木産地を巡る ― 平成27年11月26日(木)、報道関係者が郡山市、天栄村、玉川村を訪問
福島県は、「平成27年度 新生!ふくしまの恵み発信事業」の一環として、これから本格的な冬にかけて日本人の食卓を彩る機会が増えるきのこをテーマとするメディアツアーを、去る平成27年11月26日(木)に実施いたしました。
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日本で初めて導入された、きのこ原木非破壊検査機器
豊かな森林資源に恵まれた福島県は、きのこやきのこ原木(しいたけ等を栽培するほだ木の材料)の一大産地として知られてきました。しかし、先の大震災および原発事故により、これらの産業は甚大な被害を受け、今なお風評の影響も根強く残っています。
そのような中で、生産者および関係者は、安全で質の高いもの作りに尽力し、きのこの生産量については、昨年から回復傾向に転じています。一方、県内外の生産者が待ち望むきのこ原木については、今年度、全国初の非破壊検査機器が導入され、出荷量確保に向けた取組が始まっています。
今回のメディアツアーでは、福島県林業研究センターにおける安全性確保へ向けた取組や、菌床しいたけの生産現場、きのこ原木の非破壊検査の様子などを、報道関係者に視察していただきました。
なお、福島県では、今回のメディアツアーに先立ち、平成27年10月21日(水)に第2回メディアセミナー「福島の『きのこ・きのこ原木』生産の復興へ向けた取組 ― 市場流通する県産きのこが安全でおいしい理由 ―」を都内で開催しました。今回行われたメディアツアーには、東京や福島から新聞・雑誌記者、フリージャーナリスト、さらにテレビ局の報道関係者など34名が参加し、セミナー会場で見聞きした内容を現地で確認できる機会となりました。
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日本で初めて導入された、きのこ原木非破壊検査機器
■福島県林業研究センターで
きのこ原木除染システム・ウエットブラストを視察
最初に、郡山市内にある福島県林業研究センターを訪問しました。同センターは、育林経営や緑化保全について研究する森林環境部と、木材利用や特用林産物の活用について研究する林産資源部などから成り、きのこは特用林産物に分類され、優良品種の開発や増殖技術の研究、きのこ等を活用した機能性食品の開発などが、盛んに行われてきました。
きのこの生産方法には大きく分けて、コナラ等の原木を利用した「原木栽培」と、おが粉を利用し、ブロック状に成型した「菌床栽培」がありますが、震災後は、そのようなきのこ原木、ほだ木、おが粉や菌床など、きのこの各生産資材における放射性物質の測定や、森林内の放射性物質の動態がきのこ類に与える影響についての研究なども行ってきました。その中でも特に、きのこ原木の除染システムとして、研磨剤入りの洗浄水を高圧で吹付け、原木の表皮を洗い流すウェットブラスト洗浄装置は、県内主要産地で出荷自粛が続くきのこ原木の出荷再開に向けて、非破壊検査機器とともに大きな期待が寄せられています。今回のメディアツアーでは、そのウェットブラスト洗浄装置も視察しました。
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本格的な導入・稼働が待たれるウェットブラスト洗浄装置
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ウェットブラスト洗浄装置で洗浄する前のきのこ原木(写真奥)と処理後の原木(手前)
■多彩な県産きのこをふんだんに使った昼食で、そのおいしさを確認
昼食は、郡山市内の名湯、磐梯熱海温泉の老舗旅館、ホテル華の湯でとりました。同ホテルは、食材の良さを引き出す料理が自慢の宿として知られていますが、今回は、メディアツアーのために特別メニューとして、県産きのこをふんだんに使った昼食を、総料理長の齋藤 正大さん自ら開発し、振舞っていただきました。ひらたけ、エリンギ、なめこ、えのき、しいたけ、きくらげ、たもぎだけなど、実に7種類ものきのこを、小鉢や盛合せ、鍋、椀、炊込みご飯と使い分け、御膳に仕立てました。
きのこ類も他の野菜類と同様、鮮度が重要です。首都圏に比較的近く、より新鮮な状態でお届けできる福島県産のきのこ類は、市場でも重宝されていますが、この日は、まさにとれたてのおいしさを報道関係者に存分に味わっていただきました。
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昼食の食材として使ったきのこを手にする齋藤料理長
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県産きのこをふんだんに使った特別メニューの昼食御膳
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新鮮なきのこの料理に舌鼓を打つ報道関係者
■菌床しいたけ生産者を訪ね、産地復興の歩みと
しいたけ生産へのこだわりについて聞く
昼食後は、天栄村の菌床しいたけ生産者、JA全農福島しいたけ生産販売協議会 会長 大野 一宏さんの生産現場を訪問しました。震災直後は、生産施設や自宅が大きな損害を受け、精神的にも追込まれたという大野さん。奥さんの励ましの言葉や、生産者仲間らとの助け合いが心の支えとなり、その苦境を乗り越えることができたとのことです。
「誰か一人だけがいい思いをするのではなく、生産者全員が元通り、あるいはそれ以上に立派なきのこを作れるようになって、はじめて産地復興と言えるのです。そのためには、ノウハウを共有し切磋琢磨し合って、“きのこ王国福島”ここにあり、ということをみんなで示していかないといけないのです」と、大野さんは力強くその信条を語ります。
施設栽培でしいたけを生産する大野さんは、施設内の温度や湿度に人一倍気を遣います。しいたけの生育が盛んな時期は、十分な換気が必要となりますが、施設内で何台もの扇風機を回し「まるで台風みたいですね」と言われるほどだそうです。「施設の中は、いつもすがすがしい状態でないと、良いしいたけはできません。また、菌を眠らせないようにするため、こまめに菌床をたたいたりすることも必要です。収穫期になると、気が抜けない日々が続きます」(大野さん)。
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菌床づくりの工程を詳細に説明する大野さん
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自慢のしいたけを手に語る大野さん
■きのこ原木の出荷再開に光をもたらす非破壊検査機器
今回のメディアツアーで最後に訪問したのは、きのこ原木非破壊検査機器を設置している、あぶくま地域広葉樹 利用協同組合の阿崎 茂幸さんの玉川村にある作業場です。
福島県は、日本一のきのこ原木の移出量を誇り、全国の産地にきのこ原木を供給してきました。しかし、先の大震災の原発事故の影響で、県内産のきのこ原木は、その多くが出荷できない状態にあり、全国では深刻なきのこ原木不足に発展しています。阿崎さんも、40年来、きのこ原木を生産・出荷してきた一人ですが、震災後は、思うようにそれができない状況が続いています。
こうした状況に鑑み、福島県では、全国で初めて、きのこ原木非破壊検査機器を導入し、県内外の生産者が待ち望む福島県産きのこ原木の出荷量確保に向けた準備を進めています。作業場では、1日に約300本のきのこ原木を非破壊検査機器で検査し、本格的な稼働へ向けた準備を進めています。「まさに天からの授かりものです」と語る阿崎さん。「林業研究センターで開発中のウェットブラスト洗浄装置と、この きのこ原木非破壊検査機器がそろえば、復興へ向けた大きな一歩が踏み出せます」(阿崎さん)。
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阿崎さんの話に聞き入る報道関係者
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検査のデモンストレーションをするスタッフ
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