短パルスレーザーでシリコン基板の内部のみを加工し 光学素子(回折格子)の作製に成功
「Beyond 5G」時代に必要な半導体技術の貢献に期待
芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上 雅人)工学部機械工学科の松尾 繁樹教授、徳島大学大学院社会産業理工学研究部の直井 美貴教授らの研究グループは、完全に透明ではない短い波長のレーザーを用いて、シリコン基板の表面・裏面を傷つけずに内部だけを加工できる条件を調査。作製した回折格子が光学的に機能することを実証しました。この成果は半導体や集積回路におけるシリコンフォトニクスの技術発展に寄与することが期待されます。
■ポイント
・シリコン基板の表面・裏面を傷つけず
内部だけを加工できる集光照射の条件を精査
・作製された回折格子が、実際に機能することを実証
・5G時代やBeyond 5G時代で多様な用途が見込まれる半導体において、
シリコンフォトニクス技術などの発展に寄与することが期待できる
Inscribing diffraction grating inside silicon substrate using a subnanosecond laser in one photon absorption wavelength
Kozo Sugimoto, Shigeki Matsuo, & Yoshiki Naoi
Scientific Reports Volume 10, Article number: 21451 (2020)
DOI:10.1038/s41598-020-78564-z
■研究概要
5G時代やBeyond 5G時代では情報の大容量化と高速伝送化が飛躍的に発展し、半導体にはこれまで以上に多様な用途に応じた技術革新が求められます。そして半導体素材のシリコンウエハー製造では、情報処理や光通信システムの基盤技術として「シリコンフォトニクス(シリコン基板に発光素子や受光素子などを集積する技術)」の重要性が高まっています。しかし使われる技術は表面加工に関するものが多く、レーザーを用いた内部加工技術については、レーザーを集光してシリコンを分断するダイシングなど一部に留まっています。この内部加工技術の光学的な応用を目指した研究も行われていますが、その多くはシリコンに対して透明な波長のレーザーが用いられています。
本研究では、これまでの研究よりも波長がやや短く、シリコンに対して完全に透明ではない波長のレーザーを用い、シリコン基板の表面・裏面を傷つけずに内部だけを加工できる条件を調査。そして、得られた加工条件から作製した回折格子が光学的に機能することを実証しました。この成果は、シリコンフォトニクスの要素技術へ発展することが期待されます。
今後は、内部加工によって生じる変化の内容解明や、変化を局在させる研究、実用的な使用用途を考案・作製する研究を行います。
■論文情報
著者 : 芝浦工業大学大学院修士課程 機械工学専攻 杉本 幸大造(2018年度修了)
芝浦工業大学 工学部機械工学科 教授 松尾 繁樹
徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 教授 直井 美貴
論文名: Inscribing diffraction grating inside silicon substrate
using a subnanosecond laser in one photon absorption wavelength
掲載誌: Scientific Reports
DOI : https://doi.org/10.1038/s41598-020-78564-z
■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。
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