<現代人のドライアイの悩みと対処実態調査> 目の乾きに悩む人...

<現代人のドライアイの悩みと対処実態調査>  目の乾きに悩む人の大半が、原因と対処法を誤解! 蒸発しやすい涙で悩み続けている「ドライアイ難民」※1も約6割  ~涙液蒸発亢進型ドライアイの正しいケア方法を眼科医が紹介~

角膜(黒目部分)の傷リスクとケア方法について啓発を行う「現代人の角膜ケア研究室」は、角膜の傷につながるドライアイの実態を把握するために、目の乾きに困っている人を対象に「現代人のドライアイの悩みと対処実態調査」(2021年9月実施)を行いました。その結果、数年以上ドライアイに悩みながらも、症状改善を諦めている「ドライアイ難民」が全体の63.0%もいることが明らかになりました。なぜ数年以上にわたりドライアイに苦しんでいるのか。目の乾きに困っている人の認識や生活習慣を調査したところ、72.6%が「(ドライアイには)水分補給が最も重要」と認識していました。


現代のドライアイの主流は、 涙の蒸発を防ぐ保湿ベール(油層)の乱れが原因の「涙液蒸発亢進型ドライアイ」で、ドライアイ全体の86%(※2)を占めています。この「涙液蒸発亢進型ドライアイ」には、水分補給のみのケアでは不十分にもかかわらず、水分補給のケアが最も重要と認識していることから、適切な対処ができずドライアイが改善しない可能性もみえてきました。監修いただいた伊藤医院眼科副院長の有田 玲子先生より、正しいドライアイの知識と水分補給だけでは解決できない「涙液蒸発亢進型ドライアイ」のケア方法として、涙の蒸発を防ぐ「保湿ベール(油層)」を安定化させる方法を解説します。


※1:頻繁に目の乾きを感じているにも関わらず、ドライアイへの誤解から適切なセルフケアができず、数年以上目の乾きに困り、かつ症状改善を諦めている人と定義



1. 調査結果サマリー

(1) 数年以上目の乾きから抜け出せず、改善を諦めている“ドライアイ難民”は全体の63.0%

(2) 目の乾きに困っている人のうち、71.0%が「目が乾く原因は涙の分泌量が少ないこと」と回答しており、72.6%が「水分補給が最も重要」と認識している

(3) 点眼薬ユーザーの69.0%が、「潤いを実感できるのは15分以下」と回答

(4) 目の乾きに困っている人の大半が知識不足によりドライアイを悪化させる生活習慣をしてしまっている


【調査概要】現代人のドライアイ悩みと対処実態調査

・調査主体  :現代人の角膜ケア研究室

・期間    :2021年9月17日(金)

・方法    :インターネット調査

・本調査対象者:500人20代~60代 男女(国内在住)頻繁に

        目の乾き症状を感じ困っているが、通院していない人

・監修    :有田 玲子先生 伊藤医院眼科副院長

        慶應義塾大学元眼科非常勤講師 東京大学眼科臨床研究員



■ドライアイの86%は、水分補給ではケアできない“瞳の保湿ベール(油層)の乱れ”が原因

● 健常な涙は、「油層」「水層」「ムチン層」の3層で成り立っており、「油層」はベールのように瞳を守り、涙の蒸発を防いでいる

● ドライアイの86%(※2)は『涙液蒸発亢進型』という、油層が不安定になることで涙が蒸発しやすい状態のタイプである

● ドライアイの86%にあたる『涙液蒸発亢進型』の人は、水分補給のみのケアでは不十分で、かえって涙が蒸発しやすい状態のままになってしまう


※2:「ドライアイ全体の86%は脂不足のドライアイ」に関する文献

Distribution of aqueous-deficient and evaporative dry eye in a clinic-based patient cohort: a retrospective study  Lemp MA, Crews LA, Bron AJ, Foulks GN, Sullivan BD. Cornea  2012 May;31(5):472-8.



2. 調査結果詳細

(1)数年以上目の乾きから抜け出せず、諦めてしまっている“ドライアイ難民”は約6割

今回の調査は、目の乾き症状に困っている人男女500名を対象に行いました。目の乾きに悩んでいる期間を聞いたところ、「数年~20年以上」の長期間にわたりドライアイに悩んでいる人は、全体の80.0%にもなりました。一方で、ドライアイの改善については、77.0%が「ドライアイは完全に治せないと思うので、ずっと付き合っていくしかない」と諦めを感じていることも明らかになりました。

こうした、数年以上悩んでいるにもかかわらず、ドライアイに関する知識を正しく持っていないために適切なケアができずに諦めてしまっている「ドライアイ難民」とも呼べる人は全体の63.0%になりました。


図1) ドライアイ難民の割合


(2)ドライアイの主原因を「涙の分泌量が少ないから」と約7割が誤解

このように長年症状に困っていながら改善を諦めている人も多いドライアイですが、実際にどのように認識されているのでしょうか。ドライアイの認識について聞いたところ、「目が乾く原因は、涙の分泌量が少ないことが一番の原因だ」と回答した人が71.0%に上りました。


前述の通りドライアイの86%は、「涙液蒸発亢進型ドライアイ」で、これは涙の分泌量が不足していることが原因ではなく、油層が乱れ蒸発しやすい状態になっていることが主原因です。しかし、調査結果にあるように、大半の人がドライアイを涙の分泌量不足が原因と認識しているようです。


そのため、ケア方法についても、「目の乾きには水分補給が最も重要」と回答した人が、72.6%に上りました。しかし、涙の分泌量が少なく水分補給で改善するケースは、ドライアイ全体の14%にとどまるため、多くのドライアイの人にとっては、水分補給のみでは不十分です。ドライアイの主原因を涙の分泌量不足と考え、水分補給のケアが最も重要と認識してしまっているため、適切なケアができていない可能性もみえてきました。


図2) ドライアイへの認識


(3)うるおいが続かない人は注意!ケアとのミスマッチが起きている可能性

ドライアイのケアについて聞いたところ最も多いケア方法は点眼薬で、8割以上が使用しています。点眼薬によるうるおいを感じられる時間について聞くと、69.0%が15分以下と回答しました。点眼薬によるうるおいを実感できる時間が15分以下の場合は、「涙液蒸発亢進型ドライアイ」の可能性が高いため、点眼薬による水分補給のケアでは不十分となります。点眼薬による水分補給ケアのみでは、ドライアイの大半を占める「涙液蒸発亢進型ドライアイ」の人には不十分となるため、多くの人は、涙は蒸発しやすい状態のままでドライアイ症状が改善していない可能性も示唆されました。


図3) 点眼薬のうるおい持続時間


(4)ドライアイの知識不足が招く、ドライアイを悪化させる習慣

目の乾きに悩んでいるにもかかわらず、ドライアイを正しく理解できていない人が多い傾向がわかりましたが、どのような生活習慣を送っているのでしょうか。有田 玲子先生監修の「ドライアイを悪化させる生活習慣」について聞いたところ、「パソコンを休憩せずに、連続して2時間以上使うことがある(74.2%)」などの目を酷使する生活習慣が上位となりました。ほかにも、「定期的に運動する習慣がない(69.8%)」など、後述する蒸発しやすい涙の状態になる習慣をしがちであることが明らかになりました。


図4) やってしまいがちなドライアイを悪化させる習慣ランキング


今回の調査で、多くの人が数年以上もドライアイに悩みながらも、ドライアイの原因を正しく理解していないために適切なケアができなかったり、悪化させる生活習慣を送ってしまっている実態が明らかになりました。現代は多くの人がスマートフォンやPCの利用など目を酷使しがちで、ドライアイは身近な症状となっていますが、改めてドライアイについて正しく理解することが重要であると思われます。そこで、ドライアイの86%を占める「涙液蒸発亢進型ドライアイ」の予防ケア方法について、監修いただいた有田 玲子先生に伺いました。



3. 有田 玲子先生による解説&「涙液蒸発亢進型ドライアイ」のケア方法を紹介

●ドライアイの86%は、“瞳の保湿ベールの乱れ”が原因

涙というのは、「油層」「水層」「ムチン層」の3層で成り立っており、その中でも「油層」はまるでベールのように瞳を守り、涙の蒸発を防ぐ役割を果たしています。多くの人が悩むドライアイですが、全体の86%(※)は『涙液蒸発亢進型』という、この涙の蒸発を防ぐ油層が不安定になっているタイプであることが論文等で明らかになってきています。調査結果にあるように、水分補給が重要と考えている人も多く、必要以上に点眼薬をさしてしまうことで、油層を洗い流してしまっている可能性があります。水分を与えることだけでは、涙が乾きやすい不安定な状態までは改善されません。この蒸発を防ぐ保湿ベールとなる油層を安定化させて保つことで、ドライアイ症状が緩和されることが期待できます。


図5) ドライアイタイプ別構成比

図6) 涙の3層構造とマイボーム腺


※:「ドライアイ全体の86%は脂不足のドライアイ」に関する文献

Distribution of aqueous-deficient and evaporative dry eye in a clinic-based patient cohort: a retrospective study  Lemp MA, Crews LA, Bron AJ, Foulks GN, Sullivan BD. Cornea  2012 May;31(5):472-8.


●涙の蒸発を防ぐ、保湿ベール(油層)に着目したケアを

油層を形成する油は、まつ毛付近にあるマイボーム腺という穴から分泌されます。しかし、不完全なまばたきや食生活の偏りによって、マイボーム腺から分泌される油の量や質が変わってしまうことがあります。この涙の保湿構造を乱す原因を知り、保湿ベール(油層)が均一になる正常な状態を保つことが重要です。

図7) 涙の保湿構造が正常な涙

図8) 涙の保湿構造が乱れた涙


●こんな生活習慣に注意!保湿ベール(油層)が乱れる原因に

調査で明らかになった、目の乾きに困っている人の多くがしている生活習慣は「涙液蒸発亢進型ドライアイ」を悪化させている可能性があります。「スマートフォンやパソコンなどの作業」は、まばたきの回数を減少させ、さらに、まばたきが浅くなることで、涙腺からの水分、マイボーム腺からの油分も出にくくなります。また、「運動不足」や「脂っこい食生活」は、血液と同じ成分である涙をドロドロにしてしまいマイボーム腺を詰まらせてしまうことにつながります。そのため、お肉中心の食事に偏らないことや、お風呂や運動で血流をよくすることも対策には効果的です。他にもアイメイクでマイボーム腺を塞いでしまったり、コンタクトレンズの使用によって保湿ベール(油層)が均一に広がりづらくなってしまっているケースもあります。このような生活習慣を見直すだけでも改善するケースがあります。


●涙は宝物!自分の涙でドライアイの悪循環を断ち切る

ドライアイ患者に多くみられるケースが、目の乾きを感じて点眼薬をさしすぎてしまっている人です。点眼薬の用法・用量以上の使用により、保湿ベール(油層)や涙をとどめる役割のムチンを流してしまい、さらに乾きを感じるという悪循環に陥ってしまいます。本来、人間の涙は、栄養豊富で乾きにくいようにできています。人工涙液では、水分補給に過ぎず、当然自分の涙には劣ります。乾きに苦しんでいる人は、まず自分の涙という宝物を取り戻す工夫をしてみてください。こうしたセルフケアの実践や適切な点眼回数を守っていても、改善しない場合は、眼科医へ相談しましょう。


●「涙液蒸発亢進型ドライアイ」を改善!涙の保湿ベール(油層)を安定化させるおすすめ習慣

(1)点眼薬は用法・容量を守り、うるおい感がつづくものを選ぶ

・1滴で十分効果的であるので、一度に何滴もささない。また、一日の上限回数を守る ※1日3-6回

・保湿ベール(油層)を安定化させて、うるおいが続く点眼薬を選ぶ

・角膜にやさしい防腐剤無添加のものもおすすめ


(2)正しく目を温める

・目を温める際は、まぶたが濡れないものを選ぶ

※あずきで温めるアイマスクやビニール袋に入れた蒸しタオルなど(1日2回・5分以上/回がおすすめ)

※まぶたをそのまま蒸しタオルや市販のホットアイマスク等で温めると、蒸気で濡れ温度が低下し冷やすことになるため、マイボーム腺の油を溶かすには逆効果に


(3)1日1分(5セット)でOK!まばたきエクササイズ(LIME研究会より)

・マイボーム腺から脂を出すには、まぶた付近の筋肉「眼輪筋」を鍛えてしっかりまばたきすることが大切! ※3日間続けると徐々に効果が出てきます


図9) まばたきエクササイズ(LIME研究会より)


(4)まつ毛の根本洗浄

・洗眼時に、まつ毛を指の腹で2~3回優しくこすって洗う

※泡が汚れを吸いとってくれる。ゴシゴシするとマイボーム腺周りに刺激を与えてしまい逆効果。クレンジングで落としきれない場合はアイシャンプーなど専用の洗浄剤やお湯で横に洗うことが大切

※汚れたままだとマイボーム腺に脂が詰まり“タピオカサイン”が発生する

図10) タピオカサイン


(5)涙に良い食事を意識

・血液がドロドロだと涙もドロドロに。中性脂肪やコレステロール値が上がる食事は目にもよくない

・血液をサラサラにして、ドライアイ改善におすすめの栄養素

  1位:オメガ3(鯖缶、アマニ油) → 水分と脂を両方増やしてくれる

  2位:ビタミンD → 脂を増やしてくれる

  3位:ラクトフェリン → 水分を増やしてくれる



■監修者プロフィール

有田 玲子先生

伊藤医院眼科副院長 慶應義塾大学眼科元非常勤講師 東京大学眼科臨床研究員


有田 玲子先生


2012年、眼科医、一般のかた、患者さんに涙のあぶら・マイボーム腺の重要性を啓蒙するべくLid and Meibomian Gland Working Group(LIME研究会)を立ち上げ、涙のあぶらの重要性をより多くの方々に発信していくことを目的に講演会・講習会・ハンズオンワークショップ・患者さん向けパンフレットの作成などActiveに活動している。国際的には涙のあぶらに関する英文論文を70報以上Publishしており、涙のあぶらに関する論文数では世界一となっている。最近では一般の方へドライアイの正しい知識啓蒙のためYouTubeチャンネルを配信している。

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