人材に重きをおく食品安全文化が 「食物汚染や回収のリスクを減らす鍵」となる
業界主導の新しいグローバルガイダンスが、 食品の安全性と製品の品質向上に向けた人材と文化の役割を示します
本プレスリリースは2023年4月13日(英国時間)に英国で配信されたプレスリリースの抄訳版です。
2023年4月13日、英国規格協会(The British Standards Institution、以下「BSI」)は、食品製造施設、食品サービス企業、レストラン、小売店において、人材を大切にし、連携を重んじる食品安全文化が、品質の向上、食物汚染や回収リスクの最小化、さらに生産性と人材の定着にも貢献するとして新しいグローバルガイダンスを発表しました。
PAS 320は、Walmartやマクドナルドを含む業界大手とのコンセンサスの下で開発された業界主導のガイダンスですが、その中で食品安全に関する事故、品質不良、回収に共通する要因が機械や技術の不具合ではなく、むしろ人的ミスだという点が指摘されています。同様に、問題が発生したときに、再発を防止する鍵も人が握っているとしています。
世界保健機関(WHO)によると、汚染された食品を摂取することで毎年推定6億人が病気になり、42万人が死亡しています。この課題に取り組もうとする熱意から、2019年の国際食品保護協会(IAFP)年次総会で円卓会議が開催され、最終的に業界運営グループが設立されました。そこで作成された文書「成熟した食品安全文化の開発と維持(PAS 320)」は、食品、飲料、小売産業のあらゆる規模の組織にとって、すべての従業員が大切にされ、食品安全を重視し、問題を報告する責任を負い、変化を起こす力を与えられるような文化を醸成するための指針となります。
このガイダンスは、製造業者、工場労働者からレストラン経営者、バリスタに至る、あらゆる人を対象にしており、食品安全文化とは何か、どのように測定するか、継続的な改善をいかに確保するかなど、食品安全文化に関する広範な議論を経た上でBSIによって公表されました。同文書では、食品安全文化を「組織内、組織間、組織全体にわたって食品安全に対する考え方と行動に影響を与える、共有された価値観、信念、規範」と定義しています。
さらに、品質を維持し、リスクを軽減する強固な文化を創造し維持するには経営陣のコミットメントが、また安全性は食品のサプライチェーンのすべての段階にかかわる全員にとっての責任であるという考え方が必要だと指摘するほか、文化は従業員の定着、品質の向上や、離職率の低下によって汚染リスクを減らす鍵となることを強調しています。
PAS 320には、問題を特定し、変化を起こす計画の実施手順が含まれています。そして、リーダーシップ、組織のビジョン、ミッション、価値、方針、組織構造、責任、説明責任、権限、変革推進チームへの指導、利害関係者、変革推進者、インフルエンサー、および食品安全文書に関連した提言を行っています。また、この業界に従事する人々を大切にするためのアドバイスも含まれています。そうすることで、食品安全の向上に役立つだけでなく、投資利益、業績改善、品質不良に伴う費用の削減、効率の向上など、その他多くのメリットをもたらします。
日本では、欧米諸国のように政府主導の食品安全文化に対する指針は出されていません。また、企業における食品安全のための対応は、規制や消費者からの苦情といった外的要因に基づくものなりがちです。一方で、現場主導の改善活動等に代表される安全文化が根付いている組織も多く見られます。そのような環境下では、プログラムを構築し、経営層から現場スタッフにいたるすべての関係者が関与する食品安全文化の醸成を推進するPAS 320のようなガイダンスが効果を発揮することが考えられます。
BSIの食品・小売サプライチェーン担当ディレクターであるNeil Cooleは次のように述べています。
「人を優先し、誰もが品質向上に貢献できる積極的な食品安全文化には変革をもたらす効果があり、安全でない食品によるリスクを軽減するのに役立ちます。これは、組織とより広範なサプライチェーン全体で継続的に改善するために、経営陣がその希望を実行に移すステップから始まります。最終的には、食品安全文化をコンプライアンスの問題から人的資本投資へと意識を変えることで、個人、組織、社会全体に大きな利益をもたらすことができるのです。」
BSIの規格ディレクターであるScott Steedmanは次のように述べています。
「汚染された食品によって、世界中で毎年多くの命が失われていることに胸が痛みます。これは業界の誰もが無視できないことであり、早急に改善するための措置が必要です。私たちは、食品安全に関連するリスクの共通要因は人であり、継続的な改善の機会を提供するのは食品安全に向けた組織文化であると考えています。PAS 320は、人々が食品産業の将来に好影響を与えることができるよう啓発するガイダンスとなります。
強固な食品安全文化を実現することは、食品業界全体の品質と安全性を高めるために不可欠です。ベストプラクティスがどのようなもので、食品産業のすべての人がどのように役割を果たすことができるかについて、世界的な一貫性を高め、明確化して理解を深めることが重要であり、これが食品業界組織の変化を加速させ、品質と食品安全に関する希望の実現に貢献します。食品安全文化に関するこの新たな基準は、世界の食品産業に対する信頼を築き、すべての人に長期的な利益をもたらします。」
食品安全文化自体は新しい概念ではありませんが、日本でも取得企業数の多い食品安全の国際的認証スキームFSSC 22000規格においても、2023年4月にリリースされたFSSC22000 バージョン 6.0で食品安全・品質文化に関する追加要求事項が盛り込まれました。食品安全文化という観点が、世界の食品業界で広まっていることの証左だと考えられます。
PAS 320規格はこちらからダウンロードいただけます(英語)。
https://www.bsigroup.com/en-GB/standards/pas-320/
なお、BSIジャパンでは来る6月9日(金)に、TKP 品川カンファレンスセンターならびにオンラインにて、「組織の食品安全とサステナビリティの両立に向けて」と題し、PAS 320やFSSC 22000 バージョン 6.0の解説をはじめ、食品安全、サステナビリティの最新動向についてご紹介するセミナーを開催します。
詳細は、 https://page.bsigroup.com/seminar-food-sustainability をご覧ください。
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、1901年の設立以来、世界初の国家規格協会として、また、ISOの設立メンバーとして活動する規格策定のプロフェッショナルです。現在、193カ国で84,000組織以上のお客様の活動に貢献しています。BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよびトレーニングコースの提供をメインとし、規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。
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