【名城大学×琉球大学】幼児の運動能力測定をより身近に、より簡...

【名城大学×琉球大学】幼児の運動能力測定をより身近に、より簡単に

2分で分かる!幼児の運動発達を可視化する新ツールを開発

本件のポイント

・幼児の運動能力を、特別な用具や広いスペースがなくても簡単に測定できる「Simple Motor Competence-check for Kids(略称:SMC-Kids、読み:エスエムシーキッズ)」を開発。
・既存の代表的な運動能力評価ツールとの比較で妥当性が確認され、測定の信頼性も高く、運動発達を正確に評価可能。
・幼児教育・保育現場での使用を主な目的とし、保護者や保育者に幼児の「運動発達を見える化」することができる。家庭や地域イベントでの活用も可能。

概要

幼児期の運動能力(※1)は、健康だけでなく認知や学習の基礎力にも影響するため、定期的にモニタリングすべき重要な指標です。しかし、従来の評価ツールは特別な用具や広いスペースを必要とし、測定項目数も多いため、保育現場での導入が難しいものでした。名城大学農学部・大学院総合学術研究科の香村恵介准教授を代表とする研究チームは、この課題を解決するため、幼児の運動能力を簡便に測定できる「SMC-Kids」を開発しました。

SMC-Kidsは、3~6歳の幼児を対象に、「10m折り返し走」と「紙ボール投げ」の2項目で構成されています。特別な用具を必要とせず、A4用紙や布ガムテープ、巻尺、ストップウォッチだけで測定が可能です。妥当性(※2)の検証では、既存の代表的な評価ツールTGMD-3と比較して、移動能力や操作能力において中程度から高い相関が認められ、信頼性(※3)の検証では評価者間および評価者内で非常に高い再現性が確認されました。

20人のクラスなら20分程度で完了する効率性を持つSMC-Kidsは、バドミントンコートよりも少し広いスペースがあれば導入できる手軽さが特徴です。その簡便さから保育現場での活用はもちろん、家庭や地域イベントでの利用も可能であり、幼児の運動発達をモニタリングし、保護者や保育者が子どもの成長を具体的に把握・支援する有用なツールとなる可能性が示されました。

本研究成果は、2024年12月19日付でSports Medicine Australia(オーストラリアスポーツ医学会)が発行している「Journal of Science and Medicine in Sport」にpre-proof版が公開されました(最終版ではありませんが、DOIを用いて正式に引用可能です)。

研究の背景

幼児期の運動能力は、身体の健康のみならず、認知能力や学習能力など、子どもの成長全体に大きな影響を与えることが知られています。そのため、幼児期における運動能力の発達を適切に把握し、支援することは非常に重要です。しかし、従来の運動能力評価ツールは、専門的な知識や技術、特別な用具、広い測定スペースなどを必要とするものが多く、保育現場で手軽に実施することが難しいという課題がありました。特に、保育現場では、限られた時間やスペースの中で、多くの子どもたちを対象に運動能力を評価する必要があるため、簡便で効率的な評価ツールの開発が求められていました。このような背景から、研究チームは、特別な準備を必要とせず、短時間で簡単に実施できる幼児向けの運動能力評価ツール「SMC-Kids」の開発に着手しました。 

研究内容

名城大学農学部・大学院総合学術研究科の香村恵介(こうむら けいすけ)准教授、仁愛大学人間生活学部の出村友寛(でむら ともひろ)准教授、中部学院大学短期大学部の小椋優作(おぐら ゆうさく)講師、琉球大学医学部・京都大学大学院医学研究科の喜屋武享(きゃん あきら)准教授、愛知教育大学創造科学系の縄田亮太(なわた りょうた)准教授、石巻専修大学人間学部の髙橋功祐(たかはし こうすけ)助教、琉球大学教育学部の松浦稜(まつうら りょう)講師らの研究チームは、3〜6歳の幼児を対象に、運動能力を簡便に測定できる「SMC-Kids」を開発し、その妥当性と信頼性を検証しました。SMC-Kidsは、10m先に置かれた2つの紙ボールを1つずつ運びながら往復して合計40mを走る「10m折り返し走」と、A4用紙5枚を布ガムテープで巻いて作った紙ボールの遠投距離を計測する「紙ボール投げ」の2項目で構成されます。どちらも特別な用具や広いスペースを必要とせず、屋内で安全に実施可能です。

妥当性の検証として、既存の代表的な運動能力評価ツールであるTest of Gross Motor Development-3 (TGMD-3)とSMC-Kidsを同じ幼児71人で測定し、関連を分析しました。その結果、10m折り返し走はTGMD-3の移動技能総合得点(走る、ギャロップ、片足跳び、スキップ、両足跳び、サイドステップ)と中程度の相関を示し、紙ボール投げはTGMD-3のボール技能総合得点(バッティング、ラケット片手打ち、ボールつき、キャッチ、キック、オーバーハンドスロー、アンダーハンドスロー)と高い相関を示すことが明らかになりました。このことから、SMC-Kidsが幼児の移動能力と操作能力を適切に評価できるツールであることが示されました(図1)。
図1.開発した運動能力測定(SMC-Kids)の値が高いほど、既存の代表的な運動能力測定(TGMD-3)のスコアも高い(中程度~高い相関関係)。rs:スピアマンの順位相関係数。
図1.開発した運動能力測定(SMC-Kids)の値が高いほど、既存の代表的な運動能力測定(TGMD-3)のスコアも高い(中程度~高い相関関係)。rs:スピアマンの順位相関係数。
信頼性の検証では、異なる評価者間、および同一評価者による再評価において、SMC-Kidsの測定結果がどの程度一致するかを検証しました。その結果、評価者間および評価者内において、非常に高い再現性が確認されました。このことから、SMC-Kidsが安定した測定結果を得られる、信頼性の高いツールであることが示されました。
これらの検証結果から、SMC-Kidsは、幼児の運動能力を簡便かつ正確に評価できる、実用性の高いツールであることが示されました。

今後の展開

今回開発したSMC-Kidsの活用を広げるため、現在、約2,000人分の測定データを収集し、幼児の運動能力を評価する基準値の作成を進めています。また、多忙な保育現場でも運動能力データの評価や管理、家庭へのフィードバックが簡単に行えるよう、Excelのマクロを活用したシステムの開発にも取り組んでいます。このシステムを通じて、園での取り組みを振り返ったり、家庭と情報を共有したりすることで、園や家庭における幼児の身体活動の促進効果を検証する予定です。SMC-Kidsを活用したこれらの取り組みが、幼児の健全な発達と健康的な生活習慣の形成に貢献することを目指しています。

用語の解説

(※1)運動能力:走る、投げるといった人間の基本的な運動スキルを幅広く含む概念であり、周囲の環境に適応しながら効果的かつ効率的に動作を行う能力としても定義される。運動能力は、主に移動能力、操作能力、バランス能力の3つの要素で構成されている。

(※2)妥当性:測定結果が実際に測定しようとしている能力(ここでは運動能力)を正確に反映しているかどうかを示す指標。TGMD-3との相関をもとに検証された。

(※3)信頼性:同じ条件で測定を繰り返した際に、結果がどの程度一貫しているかを示す。評価者間(異なる評価者が測定した場合)と評価者内(同一評価者が繰り返し測定した場合)で検証された。

研究資金

本研究は、JSPS科研費22K02421の助成を受けたものです。

掲載論文

題 名 Validity and reliability of the Simple Motor Competence-check for Kids (SMC-Kids)
    (簡便な幼児の運動能力評価ツール(SMC-Kids)の妥当性および信頼性)
著 者 Keisuke Komura, Tomohiro Demura, Yusaku Ogura, Akira Kyan, Ryota Nawata, Kousuke Takahashi, Ryo Matsuura
掲載誌 Journal of Science and Medicine in Sport
掲載日 2024年12月19日

問い合わせ先

研究に関すること

名城大学 農学部・大学院総合学術研究科
准教授 香村 恵介(こうむら けいすけ)
TEL:052-838-2468
Email:kkeisuke@meijo-u.ac.jp

報道に関すること

名城大学渉外部広報課
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口一丁目501番地
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FAX:052-833-9494
Email:koho@ccml.meijo-u.ac.jp

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