【「国民の決断」調査レポート2014 vol.4】 「転職」に関する意識調査を実施 ~女性の約6割が「1度も昇進をしたことがない」と回答~ ~男性は大企業勤務者よりも中小勤務者のほうが勤続年数が長い傾向~

株式会社オールアバウト(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 兼 CEO:江幡 哲也)が人々の決断を支援するために展開している特設サイト「国民の決断」では、2014年第4弾のレポートとして「転職」に関するアンケート調査を実施しました。調査期間は2014年8月27日(水)~8月28日(木)、首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)在住でフルタイム勤務の男女852名から有効回答を得ました。

グラフ1
グラフ1

以降、「転職」に関する意識調査のサマリーと、専門家のコメントをご紹介します。

■「国民の決断」サイトのURL: http://allabout.co.jp/gm/gt/3444/


【調査サマリー】
※コメントは全て調査監修者であるAll About「女性の転職」ガイド水野 順子氏によるもの

1) 男性の2人に1人、女性の3人に2人が転職経験者
  40代以上女性の3割以上が4回以上も転職を経験
専門家コメント:就職時期の経済・社会情勢によって雇用情勢も変わるため、就職活動をした年度によって、その後の転職回数にも差が出てくる。30~40代は失われた10年とも言われる氷河期世代であるため不本意な就職をした人などが多く、それが転職回数につながっていると思われる。

2) 男性は大企業勤務者よりも中小企業勤務者のほうが勤続年数が長い傾向
  専門分野の明確化や任される裁量が早い段階で増えることが影響か
専門家コメント:意外な印象を受けるが、中小企業では1年未満など短い期間で退職をする人と、10年以上長く勤める人と、在籍年数が両極端に分かれているからではないかと推察。

3) 転職理由は「給与への不満」が1位。他に「人間関係」などが挙がる中で、
  女性の2割が「不本意な評価」を挙げていた
専門家コメント:人間関係については、どの職場でもあることとして捉えて、良好に保つためのスキルやストレスマネジメント力を身につけていくことが今後も必要な能力であると考える。

4) 約6割の女性が「1度も昇進したことがない」と回答
  ライフワークバランスを保てる範囲であれば男女ともに約3割が昇進を希望
専門家コメント:やはりという結果。しかし今後は国の施策としても女性の管理職登用が進むため、男女の昇進頻度の割合はこの先数年間で大きく変化していくことは間違いない。

5) 今の会社にできるだけ長くいたいと考える人は半数以下
  女性よりも男性のほうが高い傾向に
専門家コメント:理由としては、転職することが自分のキャリアをつくる中での選択肢の一つになっており、会社に就職することだけでなく、「職業」に就きたいという人も増えていることが挙げられる。


【調査結果詳細】
※数値は四捨五入しているため、グラフの合計値が100%にならないものもございます。

1) 男性の2人に1人、女性の3人に2人が転職経験者
  40代以上女性の3割以上が4回以上も転職を経験
首都圏在住でフルタイムで勤務している20~59歳の男女に対し、転職をしたことがあるかどうかを聞いたところ、男性の半数近く(49.8%)が未経験であると回答していました。一方で女性の未経験者は31.9%と、約17ポイントも差がありました(グラフ1)。
また、性年代別で見てみると、男女ともに30代から転職経験者が増加傾向にあることがわかりました。40代以上の女性に至っては、3割以上が4回以上転職経験があると回答していました(グラフ2)。この結果に対し、All About「女性の転職」ガイドであり、キャリアカウンセラーの水野 順子氏は次のように分析しています。
「転職経験に関しては、全ての年代において男女問わず3割以上の人が経験しており、30代以降では半数以上の人が最初に勤めた会社にはいない、ということが調査結果として出ています。一生涯その会社に勤め上げる予定で就職したものの、会社都合で転職を余儀なくされることや、実際に働いてみると想定していたこととは違い退職することが、2人に1人の割合で起こっている、ということが明確にわかります。
また、就職時期の経済・社会情勢によって雇用情勢も変わるため、就職活動をした年度によって、その後の転職回数にも差が出てくると思われます。現在30代~40代前半の人は、失われた10年とも言われる就職氷河期世代であり、不本意な就職をした人や正社員以外の就職をした人も多く、それが転職回数につながっていると考えられます。またバブル期に就職活動をした40代後半~50代では、男女で大きな差が出てきます。その頃は『寿退社』という言葉があったように、結婚や出産で退職し一旦家庭に入る妻と働く夫、というスタイルがあったことが挙げられると考えられます」

【グラフ1】
http://www.atpress.ne.jp/releases/51264/img_51264_1.jpg
【グラフ2】
http://www.atpress.ne.jp/releases/51264/img_51264_2.jpg


2) 男性は大企業勤務者よりも中小企業勤務者のほうが勤続年数が長い傾向
  専門分野の明確化や任される裁量が早い段階で増えることが影響か
さらに、転職経験について現在所属している企業規模別に見てみると、従業員数300名未満の中小企業に勤めている男性の6割以上が転職未経験であり、従業員数300名以上の大企業に勤めている男性と比べると倍程度多いことが明らかになりました(グラフ3)。
この結果に対し水野氏は次のように分析しています。
「中小企業に勤めている男性のほうが転職経験がない、という結果については意外な印象も受けますが、中小企業では一年未満など短い期間で退職をする人と、10年以上長く勤める人と、在籍年数が両極端に分かれているからではないかと推察します。その理由として、そもそも専門職として就職をしている割合も高いことを含め、大企業に比べると比較的早い段階で自分自身の専門分野が明確になることが一因と考えます。その専門に自分が合っていると感じた人は、経験を積み専門性をさらに高めていくため、より離職することが少なくなり、在籍年数も長くなるからではないでしょうか。また、任される裁量が早い段階で多くなることも、中小企業の男性の方が転職しない理由のひとつであると考えます。人間関係が築きやすいこと、社長など経営層の顔や見えることも自分の方向性がわかりやすく、マッチする人としない人が両極端に分かれているのも一因と考えます」

【グラフ3】
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3) 転職理由は「給与への不満」が1位。他に「人間関係」などがある中で、
  女性の2割が「不本意な評価」を挙げていた
転職をした、あるいは考えた理由について男女別で聞いたところ、双方ともに4割以上と一番多かったのは「給与への不満」でした。男性で次に多かったのは、「自身のキャリアアップのため」(25.5%)、「職場の人間関係」(22.2%)、「長時間勤務」(17.0%)と続き、女性では「職場の人間関係」(28.0%)、「長時間勤務」(20.5%)、「不本意な評価」(19.1%)と続いていました(表1)。
この結果に対し、水野氏は次のように分析しています。
「会社を辞める時に一つの理由で辞めている人は少なく、様々な不満や条件が重なって辞める、もしくは辞めざるを得ないと分かります。逆に言えば、給与は低いけれど人間関係はいいから続けている、長時間労働ではあるけれど自分のやりたい仕事だから続けている、といったように、自分が満たしたいと思う条件全てではないけれど、いくつかを満たすことができていれば『退職』を決断するまでにはいかないという人が多いのではないでしょうか。退職をしてから後悔をする人の多くは、いっぺんに様々な要因が重なって状況の整理がつかない時に退職を判断してしまったということがありますので、退職を言い出す前に、まずは今の状況で改善ができそうなところはないか?と考えてみたり、人に相談をして客観視して、冷静になることが必要といえます。また、男女ともに『人間関係』が上位3位以内にありますが、人間関係についてはどの職場でもあることとして捉えて、人間関係を保つためのスキルやストレスマネジメント力を身につけていくことが今後も必要な能力であると考えます」

【表1】
http://www.atpress.ne.jp/releases/51264/img_51264_7.jpg


4) 約6割の女性が「1度も昇進したことがない」と回答
  ライフワークバランスを保てる範囲であれば男女ともに約3割が昇進を希望
また、昇進経験について転職経験と同じように聞いてみたところ、女性の約6割(59.8%)が「1度も昇進したことがない」と回答しており、男性の36.0%を約23ポイント上回る結果となりました(グラフ4)。
この結果に対し水野氏は次のように分析しています。
「日本の女性管理職割合が少ない現状からみても、これはやはりという結果です。全ての年代において女性は5割以上が一度も昇進をしていないのに比べ、男性は年齢を重ねるとともに昇進回数も経験も上がってきます。このもっとも大きな理由として、勤続年数が昇進の基準のひとつにある会社が多かったことが挙げられます。転職経験のデータから見ても女性は転職する回数も多く、必然的に1社における在籍年数が少ない傾向があるため、昇進の基準を満たしていないという点が挙げられます。しかし現在は、能力や実績によって昇進させるという実績主義の会社が増えていることから、年齢や在籍年数を問わず短期間で昇進する人が増え、一方で何年経っても昇進しない人との2極化が起こると考えられます。また、今後は国の施策としても女性の管理職登用が進むため、男女の昇進頻度の割合はこの先数年間で大きく激変していくことは間違いありません」

さらに、全体に対して昇進したいかどうかという問いに対し、男性の33.6%(「昇進を強く望んでいる」+「できれば昇進としたいと思う」)が昇進を希望しているのに対し、女性は18.3%と差があり、さらに女性の2割近く(19.3%)は「昇進のない仕事である」と回答していることがわかりました。しかし、「ライフワークバランスを保てる範囲」という条件付きであれば、女性の約3割が昇進を希望していることが明らかになりました(グラフ5)。
この結果に対し、水野氏は次のように分析しています。
「女性の雇用拡大・管理職登用が国・企業ともに積極的に進められる中、昇進を目指している女性や長く働き続けることを望む女性にとって、今は絶好のチャンスであるといえますが、多くの女性が昇進への不安や戸惑いをもっているのも現状であると考えます。今までは圧倒的に男性管理職が多く、自分が管理職になった時の働き方としてイメージできる『ロールモデル』となる女性管理職が社内にいないことが多く、将来像が描けないことも一因でした。

今までの男性管理職とは違う働き方ができる制度や企業風土を構築し、女性管理職を増やすことが必須のため、これからはますます企業独自のワークスタイルや管理職制度が増えて行くことは間違いありません。その企業にどのような制度があるかも女性が就職や再就職をする際の企業選びの基準なっていくと考えます。また、核家族化や保育園の不足などで子育てとの両立が困難であることや長時間労働による日常生活への負担などは、社会全体で変えていく必要があり、女性の雇用拡大とともに少子化対策・子育て支援が両軸で動いていくことが求められています。併せてどの年代も約4分の1の男性が『ワークライフバランスを保てる範囲で昇進をしたい』と考えている点もぜひ着目したいところです」

【グラフ4】
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【グラフ5】
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5) 今の会社にできるだけ長くいたいと考える人は半数以下
  女性よりも男性のほうが高い傾向に
最後に、今後のキャリアについては、男女ともに今の会社に居続けたい(「定年まで働きたい」+「できるだけ長く働きたい」)と考えている人は半数以下であることがわかりました。また、男性(49.3%)のほうが女性(42.6%)よりもできるだけ今の会社に残りたいと考えていることがわかりました(グラフ6)。
この結果に対し、水野氏は次のように分析しています。
「今の会社で定年まで、もしくはできるだけ長く働きたいという人が、全体では半数に満たないという点は、特にここ数年で大きく変化した働く側の意識ではないかと考えます。転職することが自分のキャリアをつくる中の選択肢の一つになっており、会社に就職することだけでなく、『職業』に就きたいという人も増えていることも挙げられます。特に女性は、結婚や出産や介護などによって生活スタイルが変わる人が多く、その都度、その時の生活にあった働き方をしたいと考え、『手に職』をもち、どんな生活スタイルになっても、またどこに住んでも働き続けるために会社で働きながらも準備をする人が多く、資格取得や習い事をするのも女性の割合が高いと感じます。また男女ともに、独立を望む人もおり、会社員として働く以外の選択を望む人も増えていると推測されます」

【グラフ6】
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■調査監修者プロフィール
「女性の転職」ガイド 水野 順子(みずの じゅんこ)
官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務を経て、キャリアカウンセラーとして独立。おもに女性のキャリア支援、学生や若者の就職支援を行っている。今までに20,000人以上をカウンセリングしている。


■調査概要(調査方法:インターネット調査)
・調査期間:2014年8月27日(水)~8月28日(木)
・調査対象:首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)在住の20~59歳男女
      合計852名
・調査対象者人数詳細
<男性>
20代:101名、30代:104名、40代:107名、50代:110名
<女性>
20代:109名、30代~50代:各年代107名



■「国民の決断」について http://allabout.co.jp/gm/gt/3444/
近年、「就職」や「結婚」、「妊娠・出産」から「老後」まで、“人生の決断”に関して選択肢や条件が多様化・複雑化しており、“決断”そのものが困難になりつつあります。そういった背景を踏まえ、2013年11月にその年を象徴する“決断”を専門家とともにランキング形式で発表するイベント「国民の決断アワード」を実施しました。2014年に入ってからも、“決断”が困難であるという状況は変わらず、むしろ消費税が増税するなど、生活者を取り巻く“決断”の困難さは増していく一方です。オールアバウトでは、専門家とともに、“決断”についてのメカニズムや現象を定量・定性的に分析し、特設サイトなどを通じて情報を発信していくことで、人々の“人生の決断”を支援していきます。

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