<水を考えるプロジェクト 水の最新動向レポート> 世界の水を救う日本の技術。世界シェア70%の“ジャパンメイド”とは 一方国内では、水道料金高沸の懸念!!2040年には水の値段が数倍に!?
“水”の安全性や選び方、活用方法を改めて考え直すことを目的とする「水を考えるプロジェクト」(所在地:東京都渋谷区)では、食品だけでなく、日常生活に欠かせない“水”の安全性や選び方も重要だと考え、各分野の有識者の知見を結集し、相互に意見交換を頻繁に行うことで、水に対する最新動向の共有と発信をおこなってまいりました。
-
純水(RO水)の生成原理
私たちの身体の約60%を構築する“水”。しかしながら、あまりに身近すぎるため、私たちは“水”について積極的に学ぶ機会を持ってきませんでした。例えば、世界に目を向けて、水道の水を“そのまま飲める”国を見てみると、ヨーロッパは安定して飲める地域がありますが、アジアで安全な水道水を手にすることができる地域は、日本とアラブ首長国連邦の2カ国だけです。さらに、南北アメリカに至っては、全滅状態です。このように、我々にとっての当たり前が、少し視点を変えることで、全く違った見え方になってくるのです。
そこで、今回は当プロジェクトのメンバー、水ジャーナリストでもある橋本 淳司 氏の、世界と国内での水の最新動向についてのコメントを発表いたします。
【橋本 淳司】
水ジャーナリスト / アクア・コミュニケーター / アクアスフィア橋本淳司事務所代表
週刊「水」ニュース・レポート発行人、NPO法人地域水道支援センター理事、NPO法人WaterAid Japan理事、NPO法人 日本水フォーラム節水リーダー。水課題を抱える現場を調査し情報発信、国や自治体への水政策提言、子どもや一般市民を対象とする講演活動を行う。現在、水循環基本法フォローアップ委員として国の水基本政策策定をサポート。静岡県立三島北高等学校スーパーグローバルハイスクール推進会議委員として水学習を通じたグローバル人材育成を行う。
■世界の水を救う日本の技術。
世界シェア70%の“ジャパンメイド”『逆浸透膜技術』
・水道水として安全な水を確保できる国は全世界でごくわずか
・ケネディ計画が発端。宇宙でも活用されている『逆浸透膜』の仕組み
橋本 淳司 氏に“逆浸透膜技術”について伺ってみました。
<有害成分をシャットアウトする逆浸透膜(RO=Reverse Osmosis膜)>
世界的に水不足、水汚染が深刻になり、農業生産や経済活動に影響を及ぼしつつあります。今後は気候変動がこうした問題をさらに助長すると懸念されています。その一方で水需要は拡大の一途をたどっています。今後も人口爆発や経済成長を背景に、工業用水、生活用水を中心に水需要の拡大が見込まれます。
水不足の根本的な解決には新たな水供給が必要とされており、近年、海水淡水化や排水再利用といった造水技術が注目されるようになりました。
海水淡水化は、海水やかん水(海水と淡水の中間)に含まれる塩分などを除去し淡水にする方法です。かつては海水を加熱し、水蒸気から淡水を得る「蒸発法」が主流でしたが、現在では、逆浸透膜(RO=Reverse Osmosis膜)を用いて塩分を分離する「逆浸透法」へと移行しています。
逆浸透膜の開発は1950年代に米国ではじまりました。米内務省が、将来の水不足解消のため、海水淡水化の研究開発に多額の国家予算(最初の5年間で250万ドル)を計上したのです。ジョン・F・ケネディ元米国大統領は「もし海水から新鮮な水を安価に取り出せるようになれば、他のあらゆる科学的業績をもしのぐ偉業となろう」と演説し、海水淡水化技術を国家事業として推進しました。1960年代になると、米カリフォルニア大学のシドニー・ロブとソーリラジャンが、酢酸セルロース膜を用いて海水淡水化技術を実用化しました。1970年代には、東レ、東洋紡、日東電工などの日本メーカーが米国から技術導入し、現在、海水淡水化用の逆浸透膜の国別シェアでは日本が世界のトップです。浄水処理のほか、半導体や液晶ディスプレイなど電子部品の製造に使う超純水や、下水の再利用にも逆浸透膜は活用されています。
[純水(RO水)の生成原理]
https://www.atpress.ne.jp/releases/75449/img_75449_1.png
[逆浸透膜技術]
https://www.atpress.ne.jp/releases/75449/img_75449_2.png
逆浸透膜の穴は微細な粒子も通しません。水分子は溶液濃度の薄い方から濃い方へ移動しますが、逆浸透膜で双方を隔てて濃い方に高い圧力をかけると、水分子だけが薄い方に移動します。逆浸透膜を通過できるのは水分子だけで、ほとんどの物質が取り除かれます。
身近なところにも、この技術は応用されています。それは逆浸透膜をつかった浄水器です。米国では1990年代に逆浸透膜を利用した家庭用浄水器が普及しました。活性炭フィルター式浄水器の穴は1ミクロン、中空系膜式浄水器は0.01ミクロン、逆浸透膜は更に細かい0.0001ミクロン。逆浸透膜浄水器はコーヒーを臭いのない真水に戻し、砒素や硝酸といった有害物質も95%以上の高率で除去することが可能です。ほかにも、宅配水のなかにも逆浸透膜で水道水を浄水し、限りなく純水に近づけたのちに、有用なミネラル分を添加したものがあります。
■水道料金高沸の懸念!?
2040年には全国的に水の値段が数倍になる可能性も!
・実は知られていない水道料金のメカニズム
・あなどれない水道インフラの維持費
世界で安全な水の確保についての動きが進む中、日本ではこの安全な水確保に警鐘が鳴らされています。
橋本氏に伺ったところ、地域の住民や企業が支払う料金収入で支えられている水道事業の値上げが相次ぐ背景について、「人口減少による利用者減や、老朽化対策の負担増が影響している。放っておけばもっと上がる可能性がある。」とお話しされていました。
<水道が断絶?配達された水を飲む時代がくる>
蛇口からそのまま水が飲める国はほとんどありません。世界一と言われる日本の水道システム。それが断絶の危機にあることをご存知でしょうか。
2015年2月「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?全国推計並びに報告書」(新日本有限責任監査法人および水の安全保障戦略機構事務局)が発表されました。これによると、2040年度までに水道料金の値上げが必要な事業体は1,221(分析対象の98%)。そのうち604の事業体で30%超の値上げが必要とわかりました。改訂率の最も高い兵庫県播磨高原広域事務組合では、1か月の水道料金が5,250円(標準世帯の平均使用量・月30立方メートル)から1万5,671円になります。1か月当たりの負担の増加は1万421円、年間の負担の増加は12万5,052円です。全国で最も水道料金が高額になると予測されている青森県深浦町では1か月の水道料金が2万6,532円、年間水道料金は31万8,384円になります。あなたの住む地域の水道料金はどうなるでしょう。ぜひ調査報告書で確認してください。(「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?全国推計並びに報告書」自治体別のデータ http://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2015/pdf/2015-02-27_01.pdf )
水道料金は、職員給与、支払利息、減価償却費、動力費や光熱費などの運営費のほかに、受水費(ダムや近隣の浄水施設からの水供給費用)などのコスト合計を、給水人口で割って算出します。したがってコストが増加したとき、あるいは使用者が減ったときに水道料金は上がります。
コストは全国的に上昇していくとされています。なぜなら水道施設は老朽化が進み、更新の時期を迎えているからです。全国では、法定耐用年数の40年を超える水道管は増え、2012年度末に全国で9.5%に達しました。12年度の更新率はわずか0.77%に止まりました。厚生労働省も市町村に更新を急ぐよう求めますが、老朽化に追いつかず、このままでは全ての更新には100年以上かかり、漏水と断水が頻発する恐れもあります。
その一方で、地方を中心に人口は減っていきます。水道事業を下支えしているのは給水人口です。東京などの大都市は給水人口が多いので、水道管路や浄水施設の更新などを行っても水道料金は全国平均より安くなります。一方、小規模自治体は下支えする人の数が少ないのです。すると水道管路や浄水施設の更新などを行うと水道料金は高くなります。
大幅に水道料金を値上げしなければ、維持できない水道施設、水道管路があるわけですから、なかには水道を維持できず、水道の断絶を選択する地域も出てくる可能性は十分にあります。蛇口をひねれば水が出るという当たり前の日常が終わるのです。たとえば、過疎地では飲み水はペットボトル水や宅配水を利用し、そのほかの生活用水は、給水車が週二回、地域の拠点まで運ぶというような未来予想図もあります。水汲みや給水車による給水は発展途上国でのことと多くの人が思うかもしれません。でも、そんなことはないのです。大幅な値上げか、あるいは給水車のような代替手段を選択しなくてはならない地域があるのです。いずれにしても、抜本的な対策を講じなければ水道経営の持続はむずかしいでしょう。
■『水を考えるプロジェクト』 プロジェクト概要
プロジェクト名: 水を考えるプロジェクト
設立年月日 : 2015年3月4日(水)
活動目的 : 飲用水の安全性に興味を持ち、
きちんと理解した上で飲用水を選ぶ・飲むことを啓発する。
サイトURL : http://www.mizu-kangaeru.jp/
<参画メンバー>
・井上 正子
(医学博士・管理栄養士 日本医療栄養センター所長)
・橋本 淳司
(水ジャーナリスト / アクア・コミュニケーター / アクアスフィア代表)
・矢野 一好
(公立大学法人 首都大学東京 客員教授 保健学博士(北里大学))
- カテゴリ:
- その他
- タグ:
- 自然・エコロジー その他ライフスタイル
記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)